婚約者の妹である王女が私を犯罪者に仕立てました。しかしその後私が仕掛けた罠にはまった彼女はその行いを皆に知られ地獄へ落ちました。
「あいつよ! あの女! あの女がお父様を殺そうとしたの!」
ヒステリックに叫ぶのは王女リーザ。
私の婚約者である王子レリアイズの三つ年下の妹である。
リーザは私を良く思っていなかった。兄の婚約者となった私を陰でことあるごとに虐めてきていたくらいで。そして今、何が起きているかというと、私は彼女が自作自演で起こした暗殺事件の犯人に仕立てられかけているのである。そこまでしてでも、リスクを負ってでも、リーザは私という存在を消してしまいたいようだ。
「お前! じっとしろ!」
「動くな!」
「止まれいっ。話は後で聞く」
私は警備兵に囲まれる。
そして犯罪者に仕立て上げられた。
その一件でレリアイズとの婚約は破棄となり、一度すべてを失うこととなってしまった。
◆
「いいきみ」
「……リーザさん」
「あんた、うざいのよ。兄様は、レリアイズは、私のものなのに。それなのに手を出すから、こういうことになるのよ」
リーザは私の前では本性を出す。
それは今も変わりない。
こうして向かい合っている現在でも彼女は本性を隠していない。
――だがこれは罠だ。
私はこの牢に録画できる機械を仕組んでいる。
つまりリーザの本性はすべて記録されているのだ。
この映像さえあれば私は真実を世に出せる。
「ま、自作自演だなんて誰も気づかないでしょうし? せいぜい貴女が犯罪者として処刑されるといいわ」
「……酷いことを言うのですね」
「はぁ? なーによ! 今さら何言ってるのよ! あっはははは!」
彼女は罠にかかった。
仕掛けられたそれにすら気づかず、彼女はもってこいな言葉を並べてくれる。
これさえあれば私の勝ち。
もう負けはない。
彼女に天罰を――この手で下してみせる。
◆
後日、私は、映像を公開した。
まずは国民向けに。
すると国は大騒ぎになった。
無理もあるまい。
王女が兄の婚約者に偽りの罪を着せていたのだから。
それによって世は荒れ、その中で国民の王族への不満が噴出。そこから一気に国をひっくり返すような流れになってゆき、やがて、王族による統治は終わりを迎えた。王族はその多くが拘束され処刑され、数少ない見逃された者も資産も地位もすべてを奪い取られることとなった。
レリアイズも、リーザも、その嵐の中で拘束され。
国民の怒りの剣によって。
その首を斬り落とされたのだった。
そして私は、後に、新しい統治者となった男性と結婚した。
レリアイズとやり直すことはできなかった。
でも幸福を手に入れることはできて。
おかげで今も穏やかに幸福に生きられているし人々からも愛されている。
私はここで生きてゆく。
馴染みある地で、温かな人たちと、まだ見ぬ未来へと進んでゆくのだ。
◆終わり◆




