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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


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誰も愛さねぇと貴方は言いましたが、私は今、『女神』として愛されています。残念でしたね、貴方は間違っていたのです。

「てめぇなんぞ誰も愛さねぇよ。ってことで、婚約は破棄な」


 婚約者アズレッドブールはある日突然そんなことを言ってきた。


 時が止まる。

 否、そんな気がする。


 脳が追いつかない、そこまでのことを告げられるとは思わなくて。


「婚約、破棄……」

「ああそういうことさ」

「どうして……」

「いやだから言ったろ。てめぇは誰にも愛されない女なんだよ」

「そんな、こと」

「うるせぇな! 俺が優しいから付き合ってやってただけなんだよ!」

「酷いです……」

「事実を言ってるだけだろ。本当のことをわざわざ言って教えてやってんだよ、優しいと思えよ感謝しろよ!」


 そんな風にして婚約破棄された晩、どうしても寝られなくて外へ出て川の様子を見に行った。すると突如大量の水が流れてきて、その水の塊に巻き込まれてしまう。流されてしまったのだ。


 あぁ、もう死ぬのか――。


 そう思ったけれど。

 不思議と恐怖はなく。


 なぜか、気味が悪いくらい、穏やかでいられた。



 ◆



「……ね、……ぶ? 大丈夫?」

「あ」


 目覚めた時、私は、知らない青年の上から見下ろされていた。


 少し幼い雰囲気のある顔立ちが印象的な青年だ。

 男性にしては可愛らしい系統でもある。


「良かった! 気がついて!」

「私、は……」

「流れてきたんです! 川から!」


 その後、青年リーフから聞いた話によれば、私が流れ着いた村は『女神』をあがめている独自の文化を持つ人たちの村だったようだ。


 そして私はその『女神』として扱われることになった。

 なぜなら川を流れてきたから。

 伝わっている伝説の中の女神の登場とまったく同じシチュエーションだったそうだ。


「女神さま、いずれは……我が息子リーフと結婚していただきたいのです」


 族長からはそう頼まれた。



 ◆



 川を流れ村にたどり着いてから五年。

 それまでは『女神』としてあがめられ大事にされ続けてきた私だったが、ついに、族長の息子で私の第一発見者でもあるリーフと結婚した。


 それでも私は今も『女神』として扱われている。


 それらの行動は村の平穏のためらしい。

 私にはよく分からない部分もある。

 それでも彼らの力になれるならそんなに嬉しいことはないので、私は今日も『女神』として生きている。


 けれど、誰よりも私を愛してくれているのは、夫であるリーフだ。


 そこは決して変わることのない部分である。


 そうそう、そういえば、かつて私と婚約していたアズレッドブールは今はもう生きていないそうだ。


 惚れた女性にプロポーズしたところ断られ、それだけではなく酷い言葉を大量に発されてしまい、そのショックで衝動的に死を選んだのだそうだ。


 心ないことを言われる痛み、少しは理解できただろうか?



◆終わり◆

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