琥珀のような瞳のせいで虐められてきましたが、そのたびに特殊な能力によって罰がくだるので、若干すっきりします。
「あの子さぁ、琥珀みたいな目してるよね」
「綺麗だよね~」
「はぁ?」
「えっ……」
「あの目、クソだよね。糞便みたい。くっさそぉ」
「え……あ……えと」
「そう思うでしょ?」
「あ……う、うん~、そうだよね~」
琥珀のような瞳を持って生まれた私――クロへリアは、子ども時代からその瞳についてあれこれ言われてきた。
「ねぇ! あんたさぁ! その瞳くそじゃない?」
中には直接虐めてくる者もいた。
とはいえ、裏でだけあれこれ言っているような陰湿な人も多かったので、わざわざ寄ってきたうえ直接言われても「ああまたか」としか思わなかったけれど。
「え、あの、何? いきなり」
「だ! か! ら! 臭そうって言ってんの!」
あの日絡んできた同年代の女子は特に厄介な人で。
「瞳が?」
「そういうことぉ」
「瞳は臭くはならないと思うけど……」
いちいち感じの悪い彼女に、私はつい腹を立ててしまって。
「あーあーあーうっざ! うっざぁ! うっざぁーっい!」
「え」
「うっざいからさ、虐められたって言ってやろ!」
「待って! 嘘をつくの!? やめてよ!」
「はぁ? 何様のつもり? 命令すんないじめっ子が!」
「虐めてないよね!?」
「誰もあんたのことなんて信じないっての」
そのせいで、この会話をした翌日、彼女は死ぬことになった。
というのも私には不思議な力が備わっているのだ。
これは気づいた時にはこの身に宿っていた。
いつからここにあったのかは誰にも分からない。
――私を怒らせた人は皆例外なく滅ぶ。
◆
「婚約、破棄することにしたから」
告げてきたのは、先月婚約したばかりの婚約者フルーレン。
彼は出会った頃よく私の瞳を褒めてくれていた。
とても美しい、と、毎日言ってくれていた。
若干鬱陶しいと思ってしまうほどに、彼は私の瞳の色を好んでくれているようだった。
「クロへリアさんの瞳さ、美しいと思っていたんだよ」
「そう言ってくれていましたね」
「でもさ……最近はどうしても美しいとは思えなくて、気持ち悪いとしか思えなくなってしまったんだよ」
けれども彼の心は変わってしまったようで。
「そう……」
「ごめん、こんなことを言って」
「いえ、構いませんよ」
もう私には興味はないみたいだ。
「それにさっ」
「何です?」
「もっと好きな人見つけちゃったんだよねぇ~」
さらに彼は続ける。
「その娘はさぁ、クロへリアさんよりずーっと可愛らしいんだよ。きらきらしてるし、袖が長くなってるのも可愛いしさ。どこまでもプリティなんだよねー、あー好き好き」
まだ続く。
「てかさ、クロへリアさんて、瞳以外に魅力ないよね」
「そうですか」
「他の部分、ダサくない?」
「そうかもしれませんね」
「そうだよ! 女性らしくないし胸も強調してないし! 見てて溜め息が出るくらいダサくてみっともないよ! 女性らしさなんて欠片もない!」
――これは。
腹が立ってしまいそうだ。
刹那、能力が発動される。
「だから婚約は破棄して――っ、う、ぁ……ぇ……うぎゃあああああああああああああああああああ!!」
突如大量の紅を吐くフルーレン。
涙もこぼれている。
「な、に、これ……う、ぐ、ぐぅるぎゃああああぁぁぁぁぁぁ! あああああああ!? ぅ、ああああああああああ!!」
そして彼は息絶えた。
◆
あれから何年が経っただろう?
思い出せない。
でも三年くらいは経った気がする。
私は今、一国の王妃となり、国のため国民のために生きている。
フルーレンの陰はもう追わない。
今は愛する人のために生きる。
愛しい人、他の誰でもない夫のために、日々を生きるのだ。
◆終わり◆




