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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


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飲酒してばかりの婚約者と離れたいので、嫌われるために動くことにしました!

 婚約者ローブゼンは飲酒してばかり。

 朝から酒を煽り、昼前にはろれつのまわらないような状態になって、それでも夜中遅い時間まで酒を飲むことを続ける。


 そんな人と結婚するなんて耐えられない。だってそんな人と結婚して幸せになれるはずがないではないか。幸せになれそうにない結婚なんて前向きに考えられるはずがない。幸せになれない道を自らの選択で行くことなど不可能だ。


 しかし、この国において、女性側から婚約を破棄するというのは難しいことだ。


 女性にはそこまでの権利はないのである。


 そこで!


 ローブゼンに嫌われるために活動を開始した。


 ちょこちょこやらかし、彼を怒らせる。

 それが私の人生の目標となったのだ。

 普通では絶対しないようなやらかしを敢えて繰り返した。


 そして、ついに、それが実る時がやって来る――。


「おい! おめぇとはもうやってけねぇ! うざすぎる! よって、婚約は破棄としてやらぁ!」


 作戦が成功した。

 嬉しい。

 でもなるべく顔に出さないように気をつけて。


「そうですか、承知しました」

「分かったかぁ?」

「はい、分かりました。婚約は破棄ということですよね」

「泣いて謝るかぁ? そしたら考えてやっても悪くはねぇがぁ」

「いえ、結構です。それでは、これにて、失礼します」


 一礼し、彼の前から去る。


 ああ、こんなに嬉しいのはいつ以来だろう。


 今ならどんなことでもできそうな気すらする。

 そんな気持ちでいっぱいだ。


「お、おいいぃぃぃぃ!?」


 叫ぶローブゼンの声が聞こえる。

 けれど気にはしない。

 もう振り返りはしない。


 こうして私は酒飲みローブゼンから解放された。



 ◆



 あれから数ヶ月、私は川で魚を獲っていて知り合った青年と結婚した。


「今日も川に行かないかい?」

「ええ、いいわよ」

「桶持っていくな!」

「釣り竿も忘れないでね、この前みたいに」

「だっはは、そうだった! 前やらかしたんだった! 気をつけないと~」


 今は気が合う者同士楽しく暮らせている。


 ちなみに、これは父から聞いた話なのだが、ローブゼンはあの後酒の飲み過ぎで内臓を悪くして亡くなったそうだ。


 ある朝突然倒れて。

 そのまま誰にも気づかれず落命してしまったらしい。


 しかし、死んでしまっていてもなお誰にも気づかれないとは――少々切ない、お気の毒に。



◆終わり◆

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