幼き日の約束を信じていました。でも彼は変わってしまっていました。あの頃の言葉を信じてきていた私が馬鹿だったのですね。
幼き日、私は、異性ながら気の合う友人であったウードレッシと将来婚約しようと話していた。
「二十歳になったらあたしたちきっと婚約しようね!」
「うん! で、結婚するんだ!」
私は信じていた。
彼も同じ気持ちでいてくれているのだろうと思っていた。
けれど、二十歳になって再会すると、彼は別人のようになっていた。
背が伸びるのは分かる。あの頃からかなりの年数が経っているから。誰だって子どもから大人になれば背は伸びるものだ、私だってそう。だからその変化に関しては驚く要素はない。
でも、何だか妙に日焼けしているし、髪の毛は虹色だし、耳にはピアスだらけ――何というか、馴染めない感じだ。
「やぁ久しぶり、リーナ」
「久々ね。っていうか、髪の毛そんな派手な色だったかしら?」
「ああこれな、染めたんだよ」
「へえ、そうなの」
「で、何で呼ばれたわけ?」
「え……」
「何なんだよ」
「覚えていないの? 昔、二十歳になったら婚約しようって……」
すると彼は大笑い。
「馬鹿か! あんなの冗談に決まってるだろ! 本気なわけないだろ!」
そうか。
私は愚かだったのか。
私は純粋にウードレッシのことを信じていたし、あの頃話していた言葉たちのことも疑いはしていなかった。
でも、彼は違った。
彼は私のことなんて何とも思っておらず。
過去の言葉も冗談でしかなかったのだ。
「もういいか? 早く帰りたいんだ。こういうの疲れるし。今日さ、俺、今から十五人とデートするんだよね」
「えっ、十五人……?」
「順番にな。だからリーナなんか相手してらんねぇんだよ」
「そう……」
あの頃のウードレッシはもういない。
「じゃあね、さようなら」
「ああ!」
きっともう二度と出会わないだろう。
この瞬間、別れたら、これが生涯最後――永遠の別れとなることだろう。
婚約は成立する前に消えた。
◆
ウードレッシに裏切られた数ヶ月後、親の仕事が急に大成功したことで我が家は大金持ちになった。そして、父のルートで知り合った男性と気が合い、彼と結婚することとなった。彼の家もまた裕福な家であり、そのおかげか彼はもちろんのこと彼の周囲の人も心が広い人が多くて。大きな問題なく楽しく暮らせている。
ちなみにウードレッシはというと、あの後、女性関係で大揉めになり殺人事件に巻き込まれたそう。
女性が女性を次々殺すその地獄にて、彼もまた巻き込まれて負傷し、命だけは助かったものの意識が戻らない状態となってしまったらしい。
で、今はその身は親の元に置かれているそうだが、実の両親からさえ鬱陶しい邪魔者として扱われているそうだ。
実の親からさえ邪魔者扱いをされる人生……どんなに切ないものだろう。
◆終わり◆




