異種族令嬢、愛される。~捨てられてもいつかは良い縁に出会えるものなのです~
怪力族の姫であるリルカラは、人間の王子アルフと婚約していた。
しかし彼はリルカラを真に愛してはおらず。
表向きは良い顔をしていたものの、裏では「あんな人外女無理だわ」などと失礼極まりない言葉を並べてばかりいた。
そして、やがて、アルフが本心を告げる日が来る。
「悪いが婚約は破棄とさせてもらう」
リルカラは固まる。
しかしアルフは勝ち誇ったような顔をしたまま。
彼には人の心はなかった。
彼の中に温かな情などというものは存在しなかったのだ。
「そんな……なぜ……」
「異種族と結婚はやっぱ無理、と思ってな」
「異種族……私が、私が怪力族だから、ですか……?」
「ああそうだよ」
「そんな……」
アルフはリルカラが傷ついていてもちっとも気にしない。それどころか、にやにやしていて、まるでリルカラの反応を楽しんでいるかのよう。リルカラが絶望の色を滲ませているのが楽しくて仕方がないかのようだ。
「でも……そういうことなら始めに婚約しなければ良かったのでは……」
「段々嫌になったんだよ! ったく、しつけーな」
「私は何かやらかしてしまったでしょうか?」
「あーあー黙れよ、うるせーよ! ……ったく、うるせーやつは嫌いなんだよ」
リルカラは涙を流しながら婚約破棄された。
リルカラは泣きながら親のところへ戻った。
それから話を聞いた彼女の親は激怒。
アルフらの国へと攻め込むことを決めた怪力族軍は、一気に行動を始め、アルフらの国を数日で滅亡させた。
とはいえ、国民まで殺めることはしなかった。抵抗しない者には罰は与えず。なるべく寛容な対応を、ということて、その地で生きてゆくことを許可した。
ただし、罪人そのものであるアルフには、罰がくだる。
アルフは拘束されて数週間拷問を受け、後に人々の前で首を落とされた。
その亡骸にはペンでの落書きが施され。
みっともない、というような状態で、かつて王都中央公園であった場所に晒された。
ちょうどその頃、リルカラは人の世へ出掛け、そこで一人の男性と出会う。
薄紫の長い髪が幻想的な青年。
「貴女は……失礼かもしれませんが、怪力族の方ですか?」
「あ、はい。リルカラといいます」
「実は僕、昔、怪力族の方に命を救っていただいたのです」
「そうでしたか……!」
その青年は人間の王子だった。
アルフがいた国とは違う国の王子である彼にリルカラは惚れた。
ちなみに彼の名はオッドレイという。
◆
あれから十年。
リルカラは今、オッドレイと結婚し、夫婦で穏やかに暮らしている。
オッドレイはリルカラを心から愛している。
そしてリルカラは愛されることに感謝しながら生きている。
また、オッドレイの国は怪力族と良い関係を築いていて、大陸でも一位二位を争うような大国となっている。
リルカラはこれからも愛されて生きてゆくだろう。
そして夫の国にも良い影響を与える。
◆終わり◆




