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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


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時折、昔の記憶を思い返す。懐かしくほろ苦いあの記憶を。~今はすべてが満ちていてとても幸せです~

 月見うどんを食べながら。


 昔の記憶を思い返す。


 懐かしくほろ苦いあの記憶を――。



 ◆



 そう、ほろ苦い記憶というのは、ある男性との婚約と婚約破棄までの記憶のこと。


 彼と出会ったのは、ある茶会だった。


 たまたま席が隣で向こうが声をかけてきてくれたことがきっかけとなって知り合いとなった。


 それから定期的に二人で会うようになっていった。

 ちなみに会っていた場所は大抵私の実家である。


 いつも快くしかも熱心に家へ来てくれる彼を尊敬していたし、彼となら一緒に生きていけるかもしれないと思っていて――それまで結婚なんて考えたことはなかったけれど、彼といると少しそういうことを考えられる気がした。


 で、やがて、私たちは将来結婚するという約束を結んだ。


 けれど、婚約してから、彼の心は急激に冷めていったようで。

 段々私を放置するようになり。

 しまいには、他の女性とかなり密に二人きりで会うようになっていって。


 それから少しして、彼は婚約の破棄を告げてきた。


 そうして彼との関係は終わってしまったのだ。


 あの頃は私もかなりショックで。今思えば馬鹿だったなと思うくらい、とにかく情緒不安定で、荒れていた。泣いてばかりの日もあった。死にたいとさえ思ってしまう日もあったくらいだった。


 ちなみに私を一方的に捨てた彼はというと、激怒した私の父が勝手に殺し屋に依頼を出していたようで、その殺し屋によって証拠も亡骸も遺らない方法で殺害されたようだった。


 つまり、彼は無となったのである。


 死の果て、彼は、皆にまともに祈ってもらうことさえできなかった。


 一方私はというと、母が見守ってくれていたこともあって徐々に回復し、次第に落ち着いて生活できるようになっていった。



 ◆



 ああ、今夜は月がとても美しい。

 そして月見うどんも美味。

 この組み合わせ、これはなかなか見事なものだ。


 美しいものを眺めていると心洗われるようで、けれども、腹が満ちていなくては心もすさみやすいものだ。


 腹を満たし、心を満たす。


 それこそが幸福。



◆終わり◆

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