ある朝、家に手紙が届きました。それは、婚約者からの手紙で、その内容は婚約破棄だったのです。
ある朝、家に手紙が届いた。
『貴女と生きてゆくことはもうやめることにしました。なぜなら、他の女性に興味が湧いたからです。つまり、貴女以外の女性を好きになってしまったのです。ということで、貴女との婚約は破棄します。ここまでありがとうございました、そして、さようなら』
手紙の出し主は婚約者プルトネット。
とはいえ内容が内容で。
もしいたずらか何かだったら大問題なので、本人に連絡し、手紙の話が本当のものなのかを本人に聞いてみた。
すると事実だった。
その日プルトネットは「もう会わないから、さようなら」と言い、それによって、私たちの関係は終わってしまった。
まさかの終わり方となってしまったが……でもどうしようもなかった。
◆
あれから数年。
私は今、裕福な家の男性と結婚し、夫婦で穏やかに暮らしながら、個人ではボランティア活動を続けている。
「今日はまたゴミ拾いに行くのか?」
「ええ」
「大丈夫そうか? 俺も行こうか」
「いえ大丈夫よ」
夫は私の活動を受け入れてくれている。
だから彼があれこれ口を挟んでくることはない。
たまにそういった話はするけれど。
「男の力も必要じゃないか?」
「え。ああ……まぁ、確かに、それはそうね」
「ゴミ袋を持つくらいならできるからさ」
「じゃあ、一緒に行く?」
「ああ! やった! ……実はさ、行ってみたかったんだ」
実は行ってみたかった、か。
何となく可愛らしいような気がする。
でも、彼が私の行動に興味を持ってくれているなら、嬉しい。
「でも……恥ずかしくて、邪魔しても悪いし、なかなか言い出せなかったんだ……」
「そうだったの! なら言ってくれれば良かったのに」
「ああそうだよな……ごめん」
「じゃ、行きましょ!」
「よっし! ありがとう!」
ちなみに、かつて私を捨てたプルトネットは、惚れ込んでいた女性と結婚する気で話を進めていたが途中で女性が他の男性とも親しくなっていたことが発覚したために結婚話は消えることとなってしまったそうだ。
彼は私を捨ててまでその女性を選んだ。
けれど彼は女性に選ばれず。
それどころかただ遊ばれているだけでしかなかったのだ。
その件で絶望したプルトネットは、自殺未遂を繰り返した後に、親の意向で施設に入ることとなったらしい。
今は一応施設内で生きることはできているようだ。
けれども昔の彼は消えてしまった。
彼はもう相手が誰であっても女性とは話せない状態となってしまっているそうなのである。
◆終わり◆




