魔法を使える私はかつて婚約者に嫌われ婚約破棄されてしまいましたが、このたびめでたく国を護る聖女に認定されました。
「穢れた魔女を妻とする気はない! 婚約は破棄だ!!」
今日、私は、婚約者ケインから大きな声でそう宣言されてしまった。
「お待ちください。私は魔女ではありません」
「言い訳など要らん! さっさと俺の視界から消えてくれ!」
話にならない……。
確かに私は魔法が使える。一般女性に比べればその才能はかなりある方だと思う。とはいえ、だからといって魔女と判断するのは短絡的過ぎると思うのだ。だが彼には考え直してみるという発想はないらしく、こちらが何か言ってもまったくもって聞こうとしない。
「魔法が使える者が皆魔女なわけでは」
「うるさい! 出ていけ!」
「落ち着いてください、落ち着いて、話を聞いて」
何とか説明しようとするが、無視されてしまって……。
「おい! お前ら、この女を追い出せ!」
さらに家から強制的に追い出されてしまった。
ケインの指示を受けた使用人に両腕を拘束された私がようやく自由になれたのは彼の家の外に出てからだった。
こんなやり方……。
酷い……。
私はしばらく立ち上がれなかった。
が、数分も経てば、折れかけた心が回復してきて。
「ま、もういいや」
ケインとは縁がなかったのだろう。
そう思えば悲しさも辛さも薄れる。
その後私は一旦実家へ戻る。
それから少しして、ちょっとした出来事をきっかけに国防軍に入った。
そこでなら魔法を人々のために使えるからだ。
国を、人を、護るための魔法。
これなら使って問題ない。
◆
国防軍が誇る魔法使いとなった私は、このたび、『国を護る聖女』に認定された。
そして今日式典がある。
「国王の名において、お主を『国を護る聖女』と認定する」
「ありがとうございます」
両親、妹、親戚、深い仲の友人。
皆、私の晴れ姿を見るため、式典に参加してくれた。
「これからも我が国のために戦ってくれ」
「はい、もちろんです」
この認定を受けた者は、国から、原則一生、生活の保証を受けることができる。そういう事情もあって、この認定を受けたい女性というのは少なくない。私の場合は違ったが、そのために国防軍入りする女性もいると聞いた。でも、多くの者が、認定されずに終わっていくのだ。
そういう意味では、私は幸運だったのかもしれない。
◆
あれから数年、私は今も『国を護る聖女』として魔法を使い続けている。
毎日は忙しい。が、苦労ばかりではない。この魔法の才能を国のために使えるということが嬉しいし、時折ファンに会った時に温かな声をかけてもらえることも励みになる。一部の悪く言ってくる者たちは無視だ。
そうそう、元婚約者のケインだが、彼は先日逮捕された。
彼は私を批判する組織を立ち上げて活動していた。だがその批判というのがあまりに過激で。最初はまだましだったのだけれど、言葉で批判するという域を越えたようなことまでするようになってきたことで国に目をつけられた。で、つい先日、法に触れるようなことをやらかしたため、代表である彼が捕まったのだ。
生きがいが他者を傷つけることだけだなんて……気の毒な人だ。
◆終わり◆