幼馴染みの王女が紹介してくれた人と婚約したのですが婚約破棄されてしまいまして……。
私には幼馴染みがいる。
その幼馴染みというのは、名はドロテアといい、この国の王女だった。
彼女はゆくゆく女王となる予定の人だ。
◆
「君と生きていくのは無理だ! 生涯のお供はやはりもっと素晴らしい女性でなくては! よって、婚約は破棄とする!!」
婚約者オールドレッツは片手を前へ伸ばしわざとらしいポーズで婚約の破棄を告げてきた。
もう少し普通な感じで言えないものだろうか?
不思議でならない。
なぜそんなに演技じみたことをする必要があるのだろう?
よく分からない。
とはいえ、彼の心が私へ向いていないということは分かったので、そういうことならこちらとしてもこれ以上踏み込む気はない。
「承知しました。では、さようなら」
それだけ言って、私は彼の前から去った。
オールドレッツを始めに紹介してくれたのはドロテアだった。
それだけに彼女には言いづらい。
一方的に婚約破棄された、なんて言ったら、彼女に恥をかかせようとしているかのようで。
どうしても気まずさを感じてしまうのだ。
だからドロテアにこのことを伝えるかどうかは悩んだ。
でも嘘をついていてもいずればれる。
ならば今言っておく方がましだろう。
だから決めた――本当のことを話すことを。
「オールドレッツさんとの婚約、破棄になりました」
「ええっ!?」
やはりドロテアはかなり驚いていた。
無理もないか。
ここまで来て話が消えるなんて。
どうしても申し訳ない気持ちに包まれてしまう。
「ごめんなさい、上手くやれなくて……」
「謝らないで! 貴女は悪くない。どうせあっちが勝手に言い出したのでしょう?」
「……いきなり婚約破棄を言われました」
「そうでしょうね、そんなことだろうと思ったわ」
「ごめんなさいドロテア、せっかく紹介してくれたのに……」
だがドロテアは私を責めようとはしなかった。
「貴女のせいではない、何度も言わせないでちょうだい」
「あ、は、はい」
「じゃあ次、また誰か紹介するわ。それでいいかしら?」
「あ……」
「何か?」
「あの、しばらく結婚うんぬんは……」
「やめておく?」
「お願いします」
それから私は定期的にドロテアのところへ出入りするようになった。
その頻度は徐々に高まり。
次第に関係性も深いものへと変貌していく。
◆
あれから数年、私は今もドロテアと共に生きている。
女性同士?
関係がない。
私たちは今とても仲が良い。
私だって、こんなことになるとは思っていなかったのだ……でも、ドロテアが妙に積極的で、それに流されてこんな風になってしまったのである。
いや、なってしまった、は、失礼か……。
ちなみにオールドレッツはというと、あの後彼の親が王家に歯向かうような行動をとったために処刑された。
オールドレッツ自身の行動が招いたことではないが、彼の親の行いが招いたことではある。少々気の毒なような気もすることはするけれど、この国の制度においては仕方のないことでもある。
それに、私としても、あんなことがあったから彼に味方する気はない。
◆終わり◆




