母が乗せられたために婚約することとなってしまいましたが、色々あって婚約を解消することができました。~彼の浮気癖は治りません~
「僕は君を愛している! 顔が好きだ! 顔が好きなんだよ! 顔が! ……あ、もちろん、その生糸のように美しい髪も好きだよ。とにかく、僕は君を愛しているんだ。だから! 婚約してほしい! そして、将来的に、僕の妻として生きてほしいんだ!」
それは学園時代。
一人の男性生徒オールドフォンが私についてまわってくるようになった。
正直どうでもいい、そう思っていたのだけれど。
話を聞きつけた母がその気になってしまって。
気づけば私はオールドフォンと婚約することになっていた。
母が勝手に決めていたのである。
滅茶苦茶だろう……。
そう思いながらも、私はオールドフォンと婚約することとなった。
変えられない。
避けられない。
そんな状態だったからだ。
◆
だが、婚約から数ヶ月が経った頃、オールドフォンは私への興味をなくしたようになってきた。
彼は婚約直後はこまめに関わってきていた。
だが段々冷めた目をするようになり。
いつしか私のことなど見つめないようになっていって。
その頃になって、オールドフォンが別の女性に惚れ込んでいることが発覚する。
しかも、オールドフォンは、その女性と深い関係に発展していた。
私はそのことを隠さなかった。
両親にすべてを話した。
すると母が激怒、オールドフォンのところへ飛んでいってしまう。
そして、婚約の解消が決まった。
「ごめんね、母のせいで……」
「いいのよお母様」
「可哀想な目に遭わせてしまって……ごめんなさい。本当に、本当に……何と言えば良いものか分からないけれど、ごめんなさいね」
「次は勝手に話をまとめないでね」
「ええ! もうしないわ! ……母が間違っていたわ」
「ありがとうお母様」
こうして私はオールドフォンと離れることとなった。
もう彼に振り回されることはない。
爽やかな気分だ。
◆
数年後、私は、この国において二三人しかいない高位魔法使いの家柄の男性と結婚した。
夫となった彼もまた高位魔法使いである。
しかし心の綺麗な人で。
一緒にいるだけで癒やされるような人だ。
「洗濯用魔法石、追加しとくね~」
「あ! ありがとう!」
「それと、ケーキ買ってきておいたよ」
「うそっ。ありがとう!」
「ここに箱ごと置いておくね」
「はーい」
オールドフォンはというと、あれから結婚と離婚を繰り返しているらしい。というのも、結婚しても浮気を繰り返すそうなのだ。だから誰と結婚しても何度も問題を起こしてしまうようで。安定した結婚生活、というのは、浮気癖が凄まじい彼にはかなり難しいことのようだ。
また、浮気をし過ぎて有名になっているため、オールドフォンの社会的な信頼や評価はかなり堕ちているみたいだ。
◆終わり◆




