ちょっとした行いが原因となり婚約破棄されてしまいましたが、後にその行いによって第三王子と結ばれることができました。
近所の子どもたちが石蹴りをして遊んでいた。
通りかかった私は彼ら彼女らに声をかけられる。
一緒に遊ぼう! そう言われ。
知り合いなので無視することも拒否することもしづらく、私は子どもたちと一緒に石蹴りをすることにした。
年齢的には浮いている、でも、法に触れるようなことではないから参加しても罪ではない。
だが、そこを、婚約者であるオードリッツに目撃されてしまって……後日、呼び出しを受けた。
「この前、子どもたちに交じって石蹴りをしていただろう!」
オードリッツは叫ぶ。
威圧的な声。
しかも顔の筋肉もがちがちになって、面は怒りに染まっている。
「あ、はい」
石蹴りくらいそこまで怒らなくても……と思うのだが。
「何をしているんだ! お前は馬鹿か!」
「すみません……少し、誘われて」
「いい年して子どもに交じって遊ぶな! 恥さらしが。婚約者が馬鹿なことをしていたら俺まで馬鹿と思われるのだぞ!」
「あれは地域の子たちとの交流です」
「馬鹿! ごみ! 幼稚!」
顔を真っ赤にして怒るオードリッツは子どものよう。
そちらの方が大人げないと思うのだが。
「ということで、婚約は破棄する!!」
えええーっ!!
「……本気、ですか?」
「当たり前だろう! 恥をかかせてくる女なんぞ! 今すぐにでもこの世から消えてほしいわ! 婚約破棄で済むだけましと思え!!」
こうして私は切り捨てられた。
◆
あれからも私は子どもたちと関わった。
もう私を縛る者はいない。
だから自由に関わることができたのだ。
そして私はその行いを国王から評価される。地域の子どもたちに生きる楽しみを与えている、と言ってもらえたのだ。国王は私を褒め表彰した。地域、ひいては国の未来のために、生きている。それが国王の評価だったのだ。
その表彰式の日、たまたま第三王子ミハエルと知り合った。
それにより私は彼と親しくなる。
そして結婚に至った。
私はまさかの展開で第三王子の妻となったのだ。
私と彼は結婚後都を離れた。そして私が生まれ育った街で暮らし始める。それが私の望みだったのだ、小さな願いでも叶って嬉しい。
「まさか貴女が本当に……ミハエル様と結婚するなんて。でも、おめでとう……!」
「ありがとうお母様」
「幸せになれよ、願っているからな」
「ありがとうお父様」
私はやはりこの街で生きていきたい。
だってここが好きだから。
好きな場所で生きていたいと願うのはおかしなことではないはずだ。
「お姉ちゃんおめでとうー!」
「王子様と結婚とかすごぉーい」
「おめたすおめたすおめたすっすっすすすす、っ、ぼへ!」
「ふざけないの!!」
私とミハエルの結婚は多くの人たちに祝福されるものとなった。
一方、かつて婚約者であったオードリッツはというと、あの後大金持ちの家の令嬢を追いかけ回して婚約にまで持ち込んだそうだが、どうやっても相手から良く思ってもらうことはできず……しまいには会うたび罵倒されるようになってしまったそうで、そのうちにオードリッツは女性恐怖症となってしまったそうだ。
令嬢との婚約は結局破棄となったようだが。
かつての健康だったオードリッツはもう戻らない。
もう遅過ぎたのだ。
彼は生涯苦しむだろう、己の内側にある闇に蝕まれて。
◆終わり◆




