婚約したその日から、婚約者とその母親と三人で暮らさなくてはならないことになり……地獄のような日々でした。しかし、そんなある日……。
オルヴァンと婚約したその日から、私は、彼の家で暮らさなくてはならなくなった。
彼と彼の母親と私。
三人での生活だ。
そこで私はオルヴァンの母親から嫌がらせを受けた。
また、彼女は婚約者というものを奴隷か何かと勘違いしているようで、私が少しでもじっとしていると激怒する。
私がじっとしていれば「働きなさいよ、嫁でしょう!?」と言ってくる。
私が働いていれば「とろいのよあなた! もう余計なことばかりしないで!」と言ってくる。
とにかく理不尽だった。
だが、ある日、そんな私のもとへ救いの手が差し出される。
「親御さんから聞いて助けに来たんだ、家から出られないみたいだね?」
ある日、オルヴァンとその母親が出掛けるからと自室に監禁されていた私の前に、一人の青年が現れた。
「は、はい……しかし、貴方は……」
「助けに来たよ。一緒に逃げよう。あ、もしかして、怪しいと思ってる?」
「すみません、その……失礼な、ことを……」
「ま、仕方ないよね。いきなりだし。ごめんね急に」
「いえ……」
彼は私の身を自由にしてくれて。
「さ、行こう」
私を屋敷の外へと連れ出してくれた。
アルクと名乗る彼は、便利屋をしている人らしい。今回は、婚約者と住むようになってから色々おかしい、と私の父から連絡があり、私の様子を見に行く仕事を受けたそうだ。また、できれば連れ帰ってほしい、という話もあったようだ。
「怒られませんでしょうか……」
「怒られ、って。その感じだと、婚約者と仲良く暮らしていたわけではないのかな?」
「はい、強制されたのです……同居するように、と」
「そうだったんだ。それは辛かったね」
アルクの優しさに、私は泣いてしまった。
その後、私は、両親のところへと送られた。
嫌な予感はあったものの具体的にどうなっているかは知らなかった父は、私から話を聞くと激怒した。
「我が娘によくもそのようなことを! 許せん! 絶対に……許さん!!」
その後、父は、オルヴァンとの婚約を破棄した。
私は隠して。
父は一人彼らと対峙し関係を終わらせてくれた。
「……ということで、婚約は無事破棄できたぞ」
「ありがとう父さん」
「しかしこんなことになってしまっていたとは……すまないな、娘よ。もっと早く動くべきだった、今は反省している」
「ううん、いいの。それより、助けてくれてありがとう」
「アルクさんに頼んでみて良かった。まぁ良いサービスかどうかは賭けだったがな……。しかし! 彼のお陰で娘を取り戻せたのだから、あの人は素晴らしい人だな!」
父にも、アルクにも、感謝している。
「ちなみに、彼にはまた頼みごとをしている」
「え」
「復讐だよ」
「え? え? ちょっと待って意味が……」
「分からなくていい、これは俺の復讐だ」
その一週間後、オルヴァンとその母親が亡くなったことを知った。
オルヴァンはある夜突然何者かに襲撃されたことで落命し、亡骸はからすの餌となったそう。そのため、彼の肉体は、骨少しくらいしか残らなかったらしい。もちろん、焼いてもいないのに、である。
オルヴァンの母親はというと、息子のほぼ何もなくなってしまった亡骸を見て絶叫している時に背後から何者かに襲いかかられ即死したそうだ。
◆
あれから数年、私はアルクの妻となっている。
彼は今も便利屋をしている。
毎日忙しそう。
私はというと、たまには手伝いもするけれど、基本的には彼と住むための家にいる。
ちなみに、ここは本来アルクと住むための家なのだが、私の両親も一緒に住んでいる。アルクはそれを喜んでくれているので、今のところこの形式でも問題は発生していない。
私はこれからもこんな風に生きていきたいと思っている。
愛する人と、両親と、共に。
素晴らしい日々だ。
◆終わり◆




