841/1194
婚約破棄を告げられ、心は砕かれた硝子のように……。
「貴様とはもう終わりとする。婚約は破棄だ」
告げられた瞬間、見ていた世界が白黒になってしまった。
貴方といた日々はとても楽しくて。
それまでとは違う世界で息をしているかのようで。
いつだって心が弾んでいた。
でも――貴方に終わりを告げられたら、もう、あの美しく鮮やかだった世界は戻らない。
硝子が割れるように。
この心は粉になって。
直すことも戻すこともできないほどに砕かれてしまった。
吹き抜ける風も、今はもう、心躍らせることはなく。
むしろ切なさを掻き立てる。
髪が揺れるたび、服の裾がなびくたび、鮮やかだったあの頃を思い出してしまって泣きそうになる。
貴方に出会って知った幸せ。
貴方に出会って変わった世界の色。
そのどちらも、もう、決して戻りはしない。
白黒、無色、そんな世界で息をする。
どこまでも虚しくて――。
それでも生きている。
呼吸は止まらない。
時もまた刻まれてゆく。
◆終わり◆




