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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


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婚約破棄されて心折れてはいられません! ~己にできることをして世に貢献するのが私の望みです~

 獣人族とのハーフである私は、人間だけの血しか受け継いでいない人たちとは違い、全身にオレンジの毛が生えている。

 そんな容姿ゆえ初めて会った人や通行人には驚かれることもある。

 でも、大抵は、説明すると「そういうことか!」と納得し理解してもらえる。


 だから、これからも、説明すれば理解してもらえるものと思っていた。


 それが普通で。

 それが当たり前のようなものなのだと。

 何の躊躇いもなく思っていたのだ。


 けれどもそれは勝手な解釈だったのかもしれない……。


「獣人族とのハーフとは聞いていたが! そんな毛だらけのこ汚い女とは思わなかった! げー、無理無理。婚約なんざ絶対に無理だわ、婚約は破棄な!」


 婚約者ギュシエルには事前に私の出自について情報が渡されていた。

 獣人族とのハーフであることも伝えていた。

 隠すことではないし隠していても見た瞬間にばれることなので前もってきちんと明かして伝えておいた。


 けれどもギュシエルは私というものを受け入れられなかったようで。


 ごみを見るかのような目でこちらを見てくる。


 まさかここまで嫌われるとは……。


「獣かよ! 女じゃねーや! じゃあな、ばいばい」


 私は一瞬にして切り捨てられてしまった。


 種族が違う、流れている血が違う、そういう意味では仕方がないのかもしれない。嫌悪感を覚えるのも自然なことなのかもしれない。でも、だとしても、もう少し言い方というものがあるだろう。人間には知能があるのだ、少しくらい配慮できないものか。


 とはいえ、今さらあれこれ言っても無駄だ。


 だから諦めることにした。


 嫌な思い出はさっさと頭から消してしまおう。


 思い出す必要なんてない。

 こねくり回す必要もない。



 ◆



 あれから数年、私は今、救助隊に加入して活動している。


 ある時、とある喫茶店で出会った一人の老齢の男性に「その体毛が役に立つシチュエーションがあるんだ!」と言われてスカウトされ、それから色々考えた後に救助隊へ入隊した。


 獣人族の血のおかげか、運動能力には恵まれている。

 なので唯一の女性隊員であってもそこまで周囲に劣らず動くことができたのだ。

 はじめは周りから「女なのに大丈夫か?」とひそひそ言われることもあった。

 けれども次第に周囲にも認めてもらえるようになっていった。

 努力すればするだけ結果が出る、それはとても楽しくて、私は初めて向いている物事に出会えた気がした。


 他人のために何かをできるというのは嬉しいことだ。


 誰かを助けた時、相手が安堵した顔をしてくれると、心が温かくなる。また、ありがとうと言ってもらえた時には、こちらまで自然と笑顔になってしまう。


 だから私はこの道を選んだことを悔いてはいない。

 むしろいつまでも続けていきたい。

 私はもう、悩むことも迷うこともせず、未来へと歩んでゆくのだ。


 ――ちなみに、ギュシエルはあの後『獣人族を人間に近づかせない会』という少々危険な感じの会を立ち上げたことで国に拘束され、強制労働を二年求められた後に処刑されたそうだ。


 どうやら、死の間際まで、彼の思想はかなり過激だったようだ。



◆終わり◆

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