我が剣、それは、ざまぁ能力です。~少々残酷ですが生まれつきのものなので仕方ないですね~
「アンタなんてクソな女よ! みっともない! ダサいくせに何生きているよ! ばっかじゃないの!」
私の母は感情の波が大きい人だった。
不機嫌になるとすぐに叫ぶ。
そして、娘である私に、最も強く当たり散らすのだ。
消えろ、とか、ごみ、とか、そんな言葉を発されるのは日常茶飯事だった。
でも、そんな母は、私が十歳になった日に亡くなった。
その日母は初めて手を出した。私にビンタをしたのだ。だがその瞬間彼女は頭部が吹き飛んだ。そして沈黙。一瞬にして母との関係は終わった。
思えばあれもそうだったのだ――後に知ることとなった、私に備わっている『ざまぁ能力』だ。
◆
二十歳になった春。
私は婚約した。
エッドフィグという青年と。
だが彼ははじめから私を良く思っていないようで……。
「お前との婚約、破棄とする!!」
婚約から数週間が過ぎたある日、突如、終わりを告げられてしまった。
「そもそもだな、お前は母親がいないのだろう? それだけでも駄目だというのに、媚びないし忠実でもない。話にならない! 何の良いところもないじゃないか」
エッドフィグは私を見下していた。
そして今も。
私を、明らかに、下の者と捉えているようだ。
母親がいない、なんて、どうでもいいことだろうに。
「だからもうおしまいにするんだ。決意は固い、絶対揺らぐことはない。やはり――素晴らしい俺は、お前みたいな底辺女ではなく、もっと素晴らしい人と結ばれなくてはな」
こうして私は婚約破棄される。
だが直後『ざまぁ能力』が発動。
エッドフィグは急に酷い腹痛に襲われる。
「っ……ぁ、ぎゃああああああああ!! 何だ!? 何なんだこれぇぇぇぇぇぇッ!? いだだだだだあぁぁぁぁいだいいだいいだいぃぃぃぃ!! うぎゃあああああ!! あばばばば、だづげでぇぇぇぇぇぇっ!!」
そして口から大量の血液を吐き出し。
その後死亡が確認された。
◆
あれから五年、私は、一人の男性と結婚した。
彼は私より五つ年上だ。
夫婦にしては年が離れている方かもしれない。
けれども構わない。
彼は良き理解者だから。
「そっかぁ。婚約していた人は亡くなってしまったんだね」
「そうなの……ざまぁ能力で」
「それってやっぱり、君を傷つけたからからなぁ」
「そうかもしれないわ。……ごめんなさい、怖いわよね?」
「ううん、怖くないよ。大好きだよ」
「……本当?」
夫は、彼は、私のすべてを知ったうえで結婚してくれた。
「もちろん!」
「良かった……」
◆終わり◆




