婚約破棄されちゃうなんて残念でごわす。でもまぁそれも運命と思って潔く諦め、先に進むでごわす。それが己の道でごわすから。
わたくしボルボ・ンゴリンラは代々商売をしてきた家に生まれた一人娘。
小さい頃から皆には可愛がられてきたでごわす。
だから婚約者にも気に入ってもらえるだろうと思っていたのでごわすが……。
「アンタみたいな人をどうやって好きになれって言うんだ? そんなこと、天地がひっくり返っても無理だよ。だからアンタとの婚約は破棄する。いいな? そういうことだからな」
婚約者の彼ルクセールは急にそんなことを言ってきて。
わたくし、その場で号泣してしまったのでごわす。
「んぼぅもおぉぉぉぉぉ! どうしてそんなこと言うんですんのぉぉぉぉ!」
思わず叫んでしまい、本心がばれてしまって……ちょっぴりはずかしいでごわす。
でも仕方ないんでごわす。辛いのでごわすよ、純粋にそういうことなのでごわす。わたくしはずっと愛されて育ってきたので、なおさら、嫌われてしまうことは心が痛くて。まさに、大ダメージ。ガラス製のココロはもう割れてしまったのでごわす。
それからしばらく泣き続け、少し落ち着いてくると彼とは別れたでごわす。
思いきり泣けた。
ならば次は。
潔く諦め未来へ進む、それがわたくしのすべきこと。
あれもこれも運命と思って潔く諦め、先に進むでごわす。
それが己の道でごわすから。
◆
婚約破棄から六年。
わたくしはお笑い芸人として忙しくしているでごわす。
ルクセールに切り捨てられてからわたくしはいろんな場所へ行って働いてきたでごわす。つまり、社会勉強。幅広いジャンルの仕事に就き、地道に経験を積んできたのでごわすよ。
でも、最終的になったのはお笑い芸人。
驚いたでごわすか?
それはそうでしょう……わたくしがお笑い芸人になるなんて、自分でも想定外。
けれど!
今はこの人生に満足しているでごわす。
仕事があり、愛され、笑ってもらえる。
それが何よりもの幸せ。
たとえかっこいいと思われるような職でないとしても、それでも、わたくしはこの道を行くと決めたのでごわす。
さて、今日もお仕事!
皆に楽しんでもらえるように。
多くの人に笑ってもらえるように。
ココロを込めて働くでごわすよ。
ちなみにルクセールはというと、他国から持ち込まれた流行り病にかかってしまったらしく、肺を悪くして落命したそうでごわす。
肺を悪く、とは恐ろしい……。
ちなみに、わたくしの祖父の母親も、昔肺を悪くして死にかけてしまったことがあったそうでごわす。これは今思い出したこと。それほど重要でもないどうでもいいことでごわすが、ふと思い出したので一応言っておいたのでごわす。
ま、他人となった人のことは気にせず。
お笑い芸人としてこれからも花開くでごわす!
◆終わり◆




