婚約破棄されてでも歴史の研究はしたいのです。なぜって、それが私の生きがいだからですよ。
「お前みたいな歴史とか何とかにしか興味のない女、一緒にいても楽しくないよ。よって、婚約は破棄とするよ」
婚約者フォドリガンはある日突然自宅へ私を呼び出してそう告げてきた。
あまり良く思われていないことは知っていた。
だから驚きはあまりない。
この日が来てしまったのだな、と思うだけで。
「これまでありがとう。じゃあな、さよなら」
フォドリガンはそう言って手を振る。その動作はまるで「さっさと立ち去れよ」と言っているかのようで。どこか感じ悪さはあった。けれども私はいちいち噛みつきはしない。婚約破棄、それは、私にとってはある意味解放でもあったから。
これでまた好きなことに打ち込める。
そう思えば嬉しいのだ。
◆
数年後、私は時をさかのぼる機械を発明し、過去へ戻って歴史を研究できることとなった。
そういう機械があれば研究はより一層はかどる。
夢はずっと皆の胸にあった。
でもその機械を誰も完成させることができなかった。
でも私にはそれができたのだ。
それを使い過去へ飛ぶことを繰り返して歴史について詳しく研究した私は、いつしか、国で一番有名で実績もある歴史研究家となった。
フォドリガンはというと、私がタイムトリップしている中で先祖の運命が変わったようで、生まれることはなくなった。
今の世界にフォドリガンという男性はいない。
死んだのではなく。
生まれてすらいないのだ。
◆終わり◆




