際どい水着を着ることを拒否したところ婚約破棄されました。~そんな彼は後に~
婚約者リゼリアンに呼ばれ彼の家へ行ったのだが。
「ねぇねぇ~、この水着を着てくれないかなぁ?」
いきなりそんなことを言われた。
差し出されたのは際どい水着。
水色の生地は発色が良く綺麗なのだが、普通の女性が身にまとうようなものではない。
「すみませんが無理です」
「お願い!」
「無理です」
「はぁ!? お高くとまりやがってクソ女!」
「それに、ここには水はありません……水着を着る必要はないかと」
すると。
「もういい! お前との婚約なんざ破棄だ!」
急にそんなことを言い出すリゼリアン。
頼みを聞いてもらえなかったから婚約破棄、とは……さすがに少々短絡的過ぎやしないだろうか。
いや、そもそも、まともな頼みであったら聞いたのだ。
問題は彼の頼みが不自然なものであったこと。
私が対応できないのも、その頼みがまともなものでないからだ。
「お前なんてもう好きじゃない! いや、よくよく考えたら前から好きじゃなかった! 肌を見せることすらしてくれないようなクソ女、好きなわけがない! 顔は良くても性格がゴミ! お願いも聞いてくれないなんてゴミ! どぶのねずみと同じくらいの魅力しかない! 好きじゃない! いいや、そもそも、好きだったことがないッ!!」
リゼリアンはひといきでそこまで言って。
「もう消えろ! 二度とそのクソのような顔を晒すな!」
際どい水着を着ることを拒否したら婚約破棄?
しかもぼろくそに言われて?
それが普通で当たり前のことだというのか?
そうは思えない。
ただ、彼と生きても幸福な未来はなさそうなので、彼とは縁を切ることにした。
◆
あれから数ヶ月。
リゼリアンが亡くなったと聞いた。
何でも、女に手を出したことで山賊と喧嘩になったそうなのだ。
言い合いの最中揉み合いになり、怒っていた敵に刺されたそう。
ほぼ即死だったらしい。
死後、リゼリアンは、際どい女性用水着を着せられた状態で一週間ほど街中につるされていたそうだ――私は気づいていなかったが。
ちなみに私はというと、もうすぐ、権力者の息子である結婚する予定だ。
彼とはとある茶葉店にて知り合った。
お互いその店によく通っていて。
それでいつしか言葉を交わすようになっていったのである。
私は。
私たちは。
きっと幸せになれるだろう。
◆終わり◆




