一度は断たれた道、婚約破棄を機に取り戻します! ~盾使いは英雄になりました~
盾使いの一族に生まれた私は、両親が共に盾使いだったこともあり、幼い頃から重く大きな盾というものに馴染んでいた。自宅にも多く置かれていたからだ。盾そのものが、私にとっては、かなり身近なものだったのである。で、そんな環境で育ったこともあり、私もまた盾使いとなるべく道を歩み始めた。
学園でも盾専攻で学び、訓練を受け、卒業。
しかしちょうどその頃に一人の男性に気に入られた。
彼の名はヴィヴェクゼという。
私に惚れたという彼は婚約を求めてきた。
そして、気づけば、私はヴィヴェクゼの婚約者となってしまっていた。
「これで美しいキミはボクのものだよ!」
「は、はぁ……」
「これからよろしく! 仲良くしてくれたまえよ」
「……はい」
盾使いとして働きたかった。
国のために生きたかった。
でもヴィヴェクゼと結婚することになったためにすべてが壊れた。
しかし、それから一年も経たず、二人の関係は沈みゆくこととなる――というのも、ヴィヴェクゼがエリーという女性に惚れ込んだのだ。
「悪いね、キミとの婚約はやっぱりなかったこととさせてもらうよ」
ヴィヴェクゼがエリーと定期的に一緒に出掛けていることは知っていた。
でもこんなことになるとは。
正直そこまでのことになるとは読んでいなかった。
「え……今さら、ですか」
勝手に婚約しておいてそれはないだろう。
どうしても腹が立ってしまう。
他者を巻き込んでおいて無責任過ぎる。
「嫌かい? 悪いね。既にキミはボクに惚れてしまっていたようだ……こりゃ罪なことをしちゃったなぁ」
「違いますよ」
「じゃあ何なんだい?」
「婚約までしておいてさらっとなかったことになんてできない、そう言っているのです」
だが、はっきり言ったことで彼を激怒させてしまい、無理矢理婚約破棄されてしまった。
溜め息ばかりだった。
心には暗雲。
前を向いていようと思いながらも前は向ききれず。
何とも言えない日々が過ぎてゆく。
――だが、婚約破棄から数ヶ月、私宛に『盾使いとして国で働かないか』という連絡が来て。
私は誘いを受けることにした。
一度は諦めた夢。
否、諦めるしかなかった道。
けれども今、私は、再びそこへと歩み出す。
まるで、心に虹がかかったかのようだ。
◆
あれから数年、隣国に攻め込まれた国を護り敵軍を撃退することに貢献したとして、私は国王から直々に表彰された。
それによって名が売れて。
一躍有名人となった私は、盾使いとして、多くのイベントに参加することとなった。
おかげで給料以上にお金が入り。
新しい盾を買って両親に贈ることができた。
そして私はもうすぐ結婚する。
驚かれるだろうか?
国王が紹介してくれた相手だ。
でも既に知り合いになっているし、気も合いそうな感じだ。
ちなみにヴィヴェクゼとエリーはというと、戦時の混乱にまぎれて泥棒を繰り返したために逮捕され処刑されたそうだ――確か、昨年の夏頃。
◆終わり◆




