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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


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嘘つき妹を信じ込んだ婚約者から婚約破棄を告げられましたが、私は、戦い己の名誉を守ることに成功しました。

 その日、婚約者アボカスは、突如私を呼び出してきた。


 言われた通り彼の家へ行くと。

 そこにはアボカスとその妹であるアボリナがいた。


「来たな」

「はい」

「今日は話がある。重要な話だ」

「重要な……何でしょうか?」


 嫌な予感しかしないが、取り敢えず聞いてみよう。


「お前、陰でアボリナを虐めていたそうだな」

「えっ」

「そんな悪女だとは思わなかった。よって、お前との婚約は破棄とする」

「な、何ですかそれ。待ってください。そんなこと、知りません。私ではないと思います、きっと何かの勘違いです」


 するとアボカスは睨んでくる。


「この期に及んでまだ嘘をつくのか? とことん悪女だな」

「違います! 嘘ではありません! 私は何もしていないのです!」

「うるさい!! ……それはアボリナの発言が嘘と言っているようなもの、失礼だ」

「しかし、私は虐めていません」


 するとアボリナが言う。


「お兄様! 騙されては駄目よ! この女、酷いの。私のドレスを破いたり、私の飲み物に毒を入れようとしたり、わざわざ二人きりになる状況を作って暴言を吐き続けてきたりするのよ。この女、最悪だわ! お兄様! 嘘つき女に騙されないで!」


 なぜ?

 どうして私が悪者なの?


 してもいないことをしたことにされるなんて、許せない。


「ほら、アボリナがそう言っている。彼女は絶対に嘘なんてつかないんだ。ということだから、いい加減罪を認めろ」

「それはできません! 私は何もしていませんので」

「ま、なんにせよ、婚約は破棄――それはもう変わらないから。じゃあな、嘘つき虐め最悪女」


 こうして私は捨てられることとなってしまった。


 何もしていないのにどうして……。


 その後、このことを己の中だけで収めることはどうしてもできず、私は父に相談した。すると父は調査員を雇ってくれた。そうして調査が始まる。そして、それから数週間後、アボリナがこれまでにもそうやって兄の婚約者や兄と少し仲が良い人を悪女に仕立て上げていた話が確認された。どうやらこのやり方は彼女のお得意のようだ。


 私は名誉を守る。


 たとえ戦うことになったとしても。


 そして戦いが始まる。

 武力でのそれではない。


 彼女のやり方が悪であると決定づけるための、物理的な戦いではないタイプの戦いだ。


 ――それから数ヶ月、戦いは終わった。


 彼の家の使用人の証言などもあって、私は、アボリナが嘘をついていたことを証明することができた。


 私は虐めてなどいない。

 アボリナが私をはめようとした。


 多くの人の協力もあり、私は無事、その事実を公に出すことができた。


 アボリナはというと、その頃婚約しようかという話をしている男性がいたそうだが、この件が明るみに出たことで男性から婚約しないことを告げられたそうだ。で、それによって情緒不安定になり、ある晩男性の家へ押しかけて号泣しながら暴言を吐いたり暴れて家具を壊したりしたそう。それによって男性の家族に治安維持組織へ通報され、アボリナはその場で逮捕されたそうだ。


 彼女は今、牢の中。


 いつかは世に出るだろうけれど。

 その時には年頃は過ぎていることだろう。


 彼女はこれからも長く冷えた飯を口にして生きてゆくのだ。


 ま、ざまぁみろ、としか思わないが。

 

 一方、アボカスはというと、皆に私との件が知られてしまったことで「妹の嘘を鵜呑みにして婚約者を切り捨てた残念な脳足らず」とひそひそと言われるようになってしまったらしく、今では家から出るのが怖くなってしまったらしい。


 一応自室からは出られるようだが、家から出ることはできず、庭に出るということだけでもかなりの恐怖感を抱くような状態だそうだ。


 また、人と関わることもできない精神状態であり、家族以外と関わることは不可能なのだそうだ。


 ちなみに私はというと、色々あったが、落ち着いてから少しして親戚の紹介で知り合った男性と結婚した。


 彼は裕福な家の出。

 そして自身も燃料販売の仕事でかなりの富を築いている。



◆終わり◆

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