誕生日をお祝いしてもらった後、婚約者が他の女性といちゃつきつつ歩いているところを目撃してしまいました。
「お誕生日おめでとう!」
その日は私の誕生日。
婚約者ダービンと共に特別な日を祝っていた。
「お祝いありがとうございます」
「生まれてきてくれてありがとー!」
「これからも幸せに生きたいです」
「俺もだよ! これからも元気に一緒にいような!」
ダービンはどこまでも純粋な目で祝福の言葉を並べてくれている。
だから私は彼を信じていたし愛していた。
でも。
その日の誕生日会後、私は見てしまったのだ――ダービンが金髪セミロングの女性といちゃつきながら歩いているところを。
「今日は遅くなってごめんな!」
「いいのいいの」
女性と一緒にいるダービン、その顔は私は見たことがないようなものだ。
それこそ、幸せを絵に描いたような、そんな表情で。
それを目にした時、私といる彼は本当の意味で幸せではないのだと理解した。
私はダービンの特別な人ではなかった……。
その現実に気づいてしまったのだ。
「婚約者の誕生日でさ。どうしても誕生日会をしなくちゃならなかったんだ。ごめんな」
「いいわよ。会いに来てくれるならそれでいいの」
「そっか」
「それより、今日はどんなことする? 楽しみよね?」
「ああ、どこまでも楽しみさ。とってもとっても」
ダービンの心はここにはない。
そう理解した。
だから私は婚約破棄に向けて動き出す。
◆
あれから数週間、ダービンとの婚約は破棄することができた。
父の兄、伯父は、そういうことに詳しい仕事をしていた。そのため、彼の力を借りて手続きを進めた。何事も詳しい人がいるならその力を借りる方が良いというものだ。
ダービンと女性からは謝罪に加えて慰謝料ももぎとることができた。
それですっきりといくかといえばそうでもないが……でも、少しでも取れるものがあっただけでも多少救いはある。
◆
あれから数年、私は今、ドレスのデザイナーとして働いている。
だがその一方で結婚もしている。
夫は農家に生まれ勉学で社会的地位を得た人だ。
「明日は新しいドレスのお披露目、だよね?」
ずっと勉学に打ち込んできた彼だけれど、私の仕事にも理解を示してくれている。彼は視野が広い。だから、勉学がすべて、とは考えていないのだ。
「ええ、そうよ」
「楽しみだなぁ。きっと注目されるよね!」
「いつも応援してくれてありがとう」
「僕は貴女が活躍することが何より嬉しいんだ。いつまでも、貴女には輝いていてほしいんだよ。だからどこまでも応援するよ」
ちなみにダービンとあの女性はというと、私との婚約破棄うんぬんの件で揉めて縁が切れてしまったようだ。
女性の親が「娘を巻き込んで」と怒り、女性をダービンから引き離したそうで――その結果、ダービンと女性は二度と会えないことが決まってしまったらしい。
その直後に女性は寂しさのあまり体調を崩して死亡。
そしてダービンもまたストレスで病気がちになり、数ヶ月後、ありふれた風邪にかかりこじらせてしまい治療の甲斐なく亡くなってしまったそうだ。
不思議なもので、二人は共に体調不良でも死亡となったのだ。
◆終わり◆




