結婚式前日でしたが、他の女性といちゃつくのなら婚約は破棄します! ~すみませんが貴方とは無理です~
結婚式前日、婚約者ケインが私ではない女性と深い関わりを持っていることが判明した。
この目で見てしまったのだ。
ケインと女性がいちゃついているところを。
私は結婚式前日に少し話したいことがあって彼の家へ行った。急だけれど関係が関係なので相手の親からも許されている。だから、特に迷うことはなく遠慮することもなく。彼の部屋へ向かった。
が、何やら女の声が聞こえてきて。
私は思わず壁の陰に隠れてしまう。
「明日結婚なんでしょう? いいのぉ? 今日までこんな風にしてて」
「いいんだよ」
「本当にぃ? ややこしいことにならないようにしてよ?」
「いいんだ、あいつ馬鹿だから。どうせ気づかねえよ。これまでだってそうだったしな」
女性の声がする、それだけでも問題だ。
結婚する直前なのだから。
でも、それだけではなく、ケインは私を馬鹿にしたような言葉を発していて――だからこそ腹が立った。
裏で他の女性といちゃつく、それだけでも舐め腐っている。
なのにさらにそんな馬鹿にしたようなことを言うなんて。
彼のことは嫌いではなかった。でもそれは少し前までの話で。今の彼の言動を目にしたら、さすがにもう彼のことを想うことなんてできなくなってしまった。舐めたことをして、舐めたことを言って、そんな人をどうすれば今までのように愛せるというのか。無理だろう、そんなこと。
「聞いたわよ、話」
勇気を出して、二人の目の前へ出ていく。
「ケイン、そんなことをしていたなんて……残念だわ」
「なっ……ど、どうして!?」
肌が空けるような服しか身にまとっていない女性と二人きりでいちゃついているなんて。
そんなこと、結婚式前日にすることではない。
「式より前に気づけて良かったわ」
「ま、待って! 勘違いだよ!」
「私が馬鹿だからって油断していたなら、それは間違いよ。もうすべて知ったから。貴方の行い、この目でしっかり見たわ」
「違う! 違うよ! こんな女、愛してなんかいない!!」
「何でもいいわ……婚約は破棄、結婚も取りやめ、いいわねそういうことだから」
彼とはもう歩めない。
「さようなら、ケイン」
そう告げ、その場から去る。
その後私はすぐにケインの親のところへ行った。
そして彼の行いを話した。
また、婚約も結婚もやめるということも、そこで告げた。
「ケイン! あいつ! 待っていてください、話を聞いてきます」
「しばいてくるわね」
ケインの父親と母親は怒りを抱え彼の部屋へと向かってゆく。
◆
ケインとの関係はあれで終わった。
あの日が終焉の日。
私たちはもう元には戻れなかった。
私はケインから償いのためのお金をもぎとることができた。
そして、相手の女性からも、粘りに粘ってお金を搾り取ることができた。
それで傷が癒えるわけではない。それですべての罪を許すことができるわけでもない。が、少しはましだ。謝罪もないよりかは良い、お金を取れるだけでも少しは良い。
ちなみに、ケインはあの後両親から酷く怒られ、女性とも別れさせられたそうだ。
女性と別れなくてはならなくなったケインは精神が不安定になってしまい毎晩家の中で暴れたり叫んだりするようになり、そのうちに近所の人に通報されて大事になってしまったそう――で、後に、ケインは近所迷惑な行為を繰り返したとして拘束され、施設に入れられたそうだ。
彼にはもう自由はない。
彼はあの頃のようにもう好き放題にはできない。
ちなみに私はというと、婚約破棄後食器店で働いていた時に客として来てくれている人と仲良くなり結婚した。
◆終わり◆




