他の女性と親しくなり過ぎている貴方を許すことはできません! 婚約破棄します!
私たちは愛し合えている。
そう思っていた。
いつだって笑顔でいられたし、いつだって一緒にいると楽しかったから。
「ねぇ~、婚約者いるんでしょ? いいのぉ~」
「いいんだよ、あいつ、俺に惚れ込んでて何も気づいてないからさ」
でも裏切られた。
いや、いつの間にか裏切られていた。
――見てしまったのだ、ある日の夕暮れに彼が他の女性と腕を絡めて身を寄せてとても仲良さそうに歩いているところを。
「そろそろ宿泊所いくか?」
「そうねぇ~、今夜も楽しませてくれるぅ?」
二人の距離はどこまでも近くて。
私なんて入っていけないくらい。
彼と婚約しているのは私のはずなのに――私は多分あの中に入ってはいけない。
「ああ」
「やったぁ~」
「そっちもご奉仕してくれよな」
「お酒も注文したいなぁ~」
「いいよ、頼も頼も」
私はそれから調査を始めた。
二人がどんなことをしているのかの調査だ。
親の知り合いの調査員に依頼して行った。
その結果、婚約者の彼とあの時の女性の二人は、既に夫婦が行うようなことにまで至っていることが判明する。
やはりか……。
分かっていた。きっとそうだろうと。でも少し期待している部分もあった、勘違いかもしれないと。もしかしたら、ただそう信じたかっただけかもしれない。真実にはとうに気づいているのに、本当の意味でそれに気づいてしまうのが嫌で、目を逸らして見ないふりをしていたのかもしれない。
でももう目を逸らすことはできない。
その後私は親の力も借りながら彼との婚約を破棄した。
決定を言葉で伝えるのは簡単だった。
でも手続きやら何やらはややこしい部分もあって少しばかり苦労もした。
ただ、その結果、無事婚約を破棄することができた。
加えて、慰謝料も取ることができた。
彼との関係は終わり。
私は一人となる。
けれどもこの先の未来には良いことがあると信じて、今を生きている。
◆
婚約破棄から数年が経った。
私は今、領地持ちの家の子息と結ばれ、それなりに裕福に暮らせている。
実家も貧しくはなかった。
けれども彼の家の方が裕福だ。
だから、結婚してからの方が、贅沢な暮らしができている気がする。
彼の家の人たちは優しい人が多く、こちらを見下すようなことはしない。夫となった彼はもちろん、彼の両親や親戚もそう。皆、私を温かく迎えてくれている。自分たちの方が裕福でも相手を威張ったり見下したりしない、そこがまた素晴らしいと思う。
ちなみに。
かつて私の婚約者だった彼と彼と親しかったあの女性は、色々揉めながらも結婚したようだが、後に夫婦で詐欺グループに加担したために国の法律に違反してしまい捕らえられてしまったそうだ。
今はそれぞれ別の牢に入れられ、自由などない生活を強要されているらしい。
二人が次に会えるのはいつだろう。
きっと当分ないはずだ。
◆終わり◆




