聖女アイレンは王子に婚約破棄される。~しかし魔王からはとても大事にされています~
強い魔力を持つ聖女としてアイレン王国の王子と婚約していたレリエア。
彼女はその美しい容姿ゆえに多くの者から愛されていた。
その青みを帯びた銀色の瞳を見つめる時、人々はその魅力に強く惹かれ、不思議なことだが目を離せなくなる。
そんな彼女だが、はめられた。
「お前! エリナを虐めていたそうだな!」
レリエアの婚約相手であるポッツ王子にはエリナという幼馴染みの女性がいて、彼女はレリエアのことを良く思っていない。
レリエアが城で暮らすようになってからことあるごとに意地悪をしていたのだが、それでも彼女の心はまったく折れず。
痺れを切らしたエリナはついに大胆な手段に出た。
そう――レリエアが自分を虐めている、という、嘘の話を広めることにしたのだ。
「虐め……? お待ちください、心当たりがありません!」
「ならエリナが嘘をついていると言うのか」
「嘘か、あるいは、何かの勘違いかもしれません」
「我が幼馴染みを嘘つき呼ばわりするとは! その神経が理解できん……やはり悪女だな! 悪女はどこまでも悪女だ!」
レリエアは真実を主張する。
けれどもなかなか理解してもらえず。
それどころか悪役にされてしまう。
「レリエア・ガーレインド、お前との婚約は破棄とする!!」
ポッツ王子はそう宣言。
それによってレリエアは捨てられた。
◆
婚約破棄に加え城から追い出されたレリエアだったが、後にその魔力を評価されて魔王ルイベスの妻となった。
彼女自身、魔王と関わることになるなんて思ってはいなかった。だが、結婚して数ヶ月が経った現在、その美しさと能力ゆえルイベスからはとても大切にされている。
「レリエア様、可愛いよな! 麗しい! 最高だよな!」
「ねぇ~、たまらないわ」
「人間にもあんな素敵な女性がいらっしゃったのね。さすがは魔王様が選んだ女性だわ」
魔王ルイベスとその妻レリエアは今、多くの魔族から注目される存在となっている。
レリエアは来てから国が良くなった。
そう言う者も少なくないくらいだ。
ちなみに、アイレン王国――否、アイレン王族は、もう滅びかけている。
ポッツ王子が人気のある婚約者であったレリエアを勝手に切り捨て幼馴染みエリナとの婚約を発表したことで、国民が怒り出したのだ。
そして、国民によって、今まさに王家がとり潰されようとしている。
既に王族の多くが拘束されて牢屋へ入れられている。
もちろんポッツ王子も例外ではない。
彼もまた汚く狭い牢屋に入れられ、愛するエリナと会うことも叶わない状態だ。
いずれ彼らは処刑されるだろう。
国民の怒りの剣によって――。
◆終わり◆




