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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


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いつも酔うと裏取引による儲けを自慢する婚約者と共に生きていくのは嫌なので、わざと嫌われることをして婚約破棄してもらうことにしました。

「俺さぁ、いっつも裏取引でがっぽり儲けててさぁ!」


 それが婚約者ツインネスの口癖だった。


 日頃はあまり色々話さない彼だが、お酒を飲んだ時には饒舌になり、平常時には絶対に話さないようなことをぺらぺらと話すのだ。


 はじめは「冗談だろう」と流していた。けれども、色々調べるうちに、彼が言っていることは嘘ではないのだと発覚。真実を知った時、そのような怪しい行為に手を伸ばしている人と結婚するのは嫌だと思った。が、女性側には婚約破棄する権利はなく。彼と離れるには婚約破棄されるしかない、という状況だった。


 そこで、私は嫌われることを繰り返した。


 ――そして。


「お前、最悪だろ! 消えろ! もう顔を見たくない! 婚約は破棄とする!! 出来損ない女は消えろ、くそ」


 ついに願いが叶った。

 ツインネスは私を切り捨ててくれた。

 望みの通りだ。


 婚約破棄された私は、ツインネスが裏で行っていたことに関する情報を速やかに世へ出した。


 それにより、彼の家には国の機関からの調査が入る。

 彼は否定していた。

 どこまでも否定し続けていた。

 だが、やがていくつもの証拠物が出てきてしまい、それによってツインネスの行いが世に本格的に出てしまうこととなる。


 それによって彼は拘束され、犯罪者として牢に入れられた。


 彼は怪しい商売に手を伸ばしていたためにすべてを失うこととなったのだ。


 それまでは評判も悪くはなかったツインネス。

 でも今ではもう評判はぼろぼろ。

 名を聞けば多くの人が「ああ、あのまずい商売の人か」と言うだろう。


 彼はもう普通の世へは戻れないのだ。



 ◆



 婚約破棄から数年、私は今、この国の平和の象徴となっている。


 というのも、ある時開催されていた『平和の象徴コンテスト』なるイベントに参加してみたところ、特に何も準備していなかったにもかかわらず最優秀賞を受賞できたのである。


 様々な分野で競い、その果てにただ一人の『平和の象徴』を選ぶ――それがこのイベントだ。


 恥ずかしながら……軽い気持ちで参加していた。

 だから最優秀賞を取れるなんて思わなかった。

 そんなことは望んでいなかったし、そんなことになるなんて夢にも思っていなかったのだ……本当に。


 でも今はこの座に就けて良かったと思っている。


 私生活には多少縛りが出てしまうけれど、それ以上に良い待遇を受けられるし、多くの人たちから温かな視線を向けてもらえる。それはとても嬉しいことだ。皆に受け入れてもらえるなんて何よりもの幸福。代えがきかない幸福というのはこういうもののことを言うのかもしれない、なんて思うくらいである。それゆえ、今はとても満たされている。


 だから私はこれからも平和の象徴という名称に相応しい人であれるよう努力し続けるのだ。


 せっかく選んでもらえたのだから。

 中途半端な気持ちでここに立ってはならない。



◆終わり◆

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