心ここにあらずだった夫はどうやら裏で他の女性と関わりを持っていたようです。……それでは終わりにしましょう、さようなら。
私とガイソンは結婚し夫婦となっていた。
しかし結婚から数ヶ月が経った頃彼はどことなく冷ややかになって。
心ここにあらずのような時間も増えた。
「ガイソン、大丈夫? 何かあった?」
「いや、何でもない」
「本当に? 何だかぼんやりしているように見えるけれど……」
「気にしないでくれ」
そんな会話を何度も繰り返した。
でも彼は一向に話を明かしてはくれず。
何か悩んでいるのかな、と思って、不安だった。
だが心配になって不安を抱く必要なんてなかったようだ。
「ガイソン、今日はどこで休憩するぅ?」
「海が見えるあそこがいいだろ」
「ああ! あそこねぇ! いいわよねぇ、軽食も頼めるしっ」
ある日、街を歩いていたところ、女性と腕を絡めるようにしながら楽しそうに喋っているガイソンを見つけた。
尾行してみると。
ガイソンと女性はいかがわしい宿泊所へ入っていった。
そういう関係の男女が入るようなところだ。
やはり、と思った私は、撮影魔法を使ってその瞬間の様子を捉えておいた。
これはきっと後々役に立ってくれるだろう――そう思って。
心ここにあらずだったのはこれが原因だろうか? だとしたら、私はもう彼を心配したりはしない。これは彼の罪だ、私を騙しているのだから。でもこのまま夫婦としてやっていけるかというと? 絶対に無理である。
◆
後日、私は両親を連れてガイソンと会い、浮気発見の件を伝えてから離婚しようと思っていることを告げた。
するとガイソンはかなり慌てていた。
どうやら気づかれていないと真剣に思っていたようだ。
でも――そんなことはどうでもいいこと、他の女性とそういう関係を築いているなら、気づかれていると気づいていたかどうかなんて意味はない。
「もう君には託せない。よって、離婚とする。娘は返してもらう」
「ま、待ってください! お父さん! 俺はそんなつもりじゃ……あれはちょっとした男の遊びで……本当に好きとかでは……」
今さら慌てて。
失礼ではあるけれど、愚かだなぁ、と思ってしまう。
いざばれた時にこんな青い顔をして慌てるなら、誠実に生きれば良かったのではないか。
「好きかどうか、など、もはや関係のないことだ」
「どうして! お父さんも男性なら分かるでしょう!? 妻一人で満足なんてできるわけがないって!」
「は? わたしは妻以外に手を出したことはないが?」
「うっ……」
「ま、そういうことだよ。皆が遊んでいるわけではない」
こうしてガイソンとは離婚することになった。
幸い、この国では女性から終わりを告げることも可能となっている。他国ではそれは認められないというところもあるようだが。この国はそういう意味では平等だ。
その後、償いのお金も引き出すことができた。
◆
あれから数年、私は再婚した。
私が住む街へ引っ越してきた一人暮らしの男性とちょっとしたことがきっかけとなって知り合い、関わるうちに徐々に親しくなり、はじめはまったく思っていなかったが結婚するに至ったのだ。
おかげで今は穏やかに幸せを感じながら生きている。
彼は私のこれまでの事情も知りながらこうして付き合ってくれている。
それはとてもありがたいことだ。
離婚歴があるだけで過剰に拒否反応を見せる者も世の中にはいるから。
ちなみにガイソンはというと。
あの後離婚になったショックで若干心を病んでしまい、悲しみをごまかし心を落ち着けるために複数人の女性と毎日のように関係を持っていたらしく。
その結果、病を貰ってしまって。
治療のためさらに金を無駄に消費することとなってしまったそうだ。
◆終わり◆




