上級魔法使いですが、嘘を吹き込まれた王子から婚約破棄を告げられました。~これからは復讐の刃となりましょう~
国が認定する上級魔法使いだった私には、フリュリン王子という婚約者がいた。
私と彼の関係は悪いものではなく。
そこそこ良い関係を保てていた、と思っている。
だが、ある時から、フリュリンの私を見る目は変わった――何があったのかは知らないが親の仇を見るような目を向けてくるようになったのだ。
それでも関係を続けていたのだけれど。
「お前とはもう無理だ! よって、本日をもって本日は破棄とする!」
ある快晴の日、フリュリンは食事の間にてそう宣言した。
「お前の実家は我が母の暗殺事件に加担していたそうではないか! 許せるわけがない! ただ、これまではずっと、言わずにいた。お前が先に明かして謝ってきたなら許そうと思っていたのだ……だがお前は黙っていた! 謝りもしない! だからもう無理だと判断したのだ」
心当たりがない……何の話でしょうか?
「お母様の……?」
「ああ! 認めるか? 我が母を殺めることに加担していたのだろう!?」
「すみません、まったく知りません」
「嘘をつくのか!?」
「いえ、嘘はつきません」
「馬鹿め! 嘘だろう! 嘘に決まっている!」
フリュリンは顔を真っ赤にして怒っている。
「嘘ではありません、信じてください!」
「信じられるか!!」
「ええ……」
「チュレシアがそう言っていたんだぞ! 嘘なわけがないだろう!」
「えと、あの、チュレシアとは……?」
「呼び捨てにするな!! 俺の昔からの知り合いの女性だ!! 呼び捨てなど無礼だぞ!!」
「すみません……」
「はっ。馬鹿が。やはり悪女は礼儀も知らないのだな」
いきなりそんなことを言われても。
知らないし、としか言い様がない。
ちょっとしたことに対して、いちいちカッとならないでほしい。
「まぁいい、そういうことだ、お前は今すぐここから去れ。荷物をまとめて一刻も早く城から出ていけ」
こうして私は城から追放された。
許せるわけがない。
こんな理不尽なこと。
心当たりはないし、実際そういうことはしていない。なのに彼は私の主張を聞かなかった。嘘だと言い張り、私の言葉は一切理解しようとしなかった。彼は私の言葉をきちんと聞こうとはしなかった。
フリュリンもそうだし、彼に嘘を吹き込んだチュレシアという女性もそうだし――二人して私を貶めて、許せるはずがない。
そんな時、魔族がメインとなって築いている国からオファーがあり、私はそこへ行き魔法使いとして働くことにした。
◆
フリュリンは死んだ。
魔族の国を虐げてきた国の悪しき王子として。
復讐心の炎に呑まれて彼は殺められた。
彼を殺めたのは、私の今の同僚だ。
そして、チュレシアもまた、魔族の国とフリュリンがいた人間の国の衝突に巻き込まれ死亡したようだ。
王子にすり寄り、長年特権を好き放題してきたチュレシア。
けれども国への思い入れはなかったようで。
戦いが始まるや否や国を脱出しようとしたそうだ。
ただ、一人で行動したために目立ってしまい早く発見され、すぐに拘束されたそうだ。
ま、勝手なことをした報いだろう。
その戦いにて多くの戦果を挙げた私は、人間でありながら魔族の国で『英雄』と呼ばれる初めての存在となった。
◆終わり◆




