私も願いを叶えたいの。~犠牲になるだけじゃ終われないのよ~
愛しているの。
貴方のこと。
どうしても忘れられないの。
――婚約破棄を告げられても。
かつて、私たちは確かにお互いを見つめていた。
けれどもそれは変わっていってしまって。
気づけば私が見ている世界と貴方が見ている世界は異なるものになってしまった。
そして、貴方は、私でない人を見つめていた。
あんなに好きだった。
あれほど愛していた。
そして今もまだ強く想っている。
なのに貴方は婚約を破棄してまで他の人のところへ行って――。
許せない。
どうしても。
「久しぶりね」
その日、私は、前もって調査していたことで判明した貴方と貴方の愛する人が毎日通る道に待機していた。
「あ……」
とても気まずそうね。
「元気そうね、安心したわ。恋が叶ったようで何よりよ」
笑みを向けるのはこれが最後。
「……ねぇ、誰?」
「えっと……前の婚約者」
「え……」
「いや、きっちり、婚約破棄はしたんだ」
「ホントに? 大丈夫?」
「もちろん、話はきっちりつけて終わらせた」
女性は不安げだ。
無理もないか、こんなところで相手の前の女に会ったら。
そして、その不安は――杞憂では終わらない。
「貴方の願いが叶ったように、私も願いを叶えたいの」
「何なんだよ!? もう終わっただろ!?」
「そうね――確かに婚約は破棄になったわ、貴方の都合で」
私を犠牲にして己の道を突き進む貴方を自由になんてさせない。
「じゃあね」
貴方を自由にはしない。
地獄の果てまで一緒にいてあげる。
◆終わり◆




