私は今、この道に恋している。~婚約破棄後、私は強くなりました~
「あんたみたいな女と一緒にいても将来は明るくない! よって、婚約は破棄とする!」
幼い頃に親に捨てられ、そこそこ地位のある家の夫婦に拾われて育った私は、実の親こそ知らないが恵まれた環境で成長してきた。
私は運が良かったと思う。
親にも環境にも恵まれて育てたのだから。
でも、人生においてすべてが上手くいく、なんてことはなくて。
「そんな……」
「俺と共に生きる女性はもっと俺に相応しい素晴らしく美しい人でなければな」
「でも、だとしても、急過ぎやしませんか」
「黙れぃっ!! 女の身であれこれ言うな、そういうところだぞあんたが俺に相応しくないところは」
婚約者ブレイルには良く思ってもらえなかった。いや、それどころか、婚約者同士でいることさえ拒否されてしまった。たとえ好きでなくても愛していなくても婚約者同士という関係でいることはできそうなものだが、彼はそれがどうしても納得できなかったようだ。
「いいからあんたは消えてくれ、俺の前から」
「あ……」
「死ねとは言わん。俺の前から去ってくれればそれでいい。じゃあな」
「……は、はい、分かりました」
こうして、あっという間に、ブレイルとの婚約者同士という関係は壊れてしまった。
何かやらかしたわけではない。
喧嘩したわけでもない。
浮気したわけでもない。
――それでも、壊れる時には壊れてしまうものなのか。
◆
その後私は実家へ戻った。
そして、親戚のお兄さんに弟子入りし、槍での戦闘を習った。
私は結婚とは別のところを目指そうと思ったのだ。
そうして槍術を数年習った後に、都へ出て、王都警備隊の入隊試験を受ける――それには案外さっくりと通ることができた。
自分では気づいていなかったが、いつの間にやらかなりレベルが上がっていたようで。女性は少ないが、それでも、私の力を見た者たちは皆温かく迎え入れてくれた。
それからは王都警備隊に加入し活動を続けることとなる。
だがやがて王宮警備隊にスカウトされて。
そちらへ移動することとなった。
それに伴い活動場所も変わる、王宮警備隊が活動する場所は王都ではなく城なのだ。
私はそこでも日々働いた。
多くの者に認められて嬉しかった。
こういう仕事は良い。
頑張れば頑張るほど認められるし称賛される。
そしてそれがまた自信となり、明日へのやる気に繋がるのだ。
こうして私はいつしか『王城の戦乙女』と呼ばれるようになっていった。自分で言ったわけではないが、誰かが勝手に言い出したのだろう――そうしてそれが徐々に定着していったのだと思う。気づけばその呼び名が広まっていた。
恋も結婚も悪くはない。
でも私は今はこうして戦って生きていたい。
この道が私の道だ。
だからこの道を行く、ただひたすらに突き進む。
私は今、この道に恋している。
「王城の戦乙女、すげえよな。また不審者倒したらしいぜ」
「やるなぁ」
「警備隊で唯一の女性なのにさ、誰よりも活躍してるんだよな」
「すごいですよね~」
ちなみにブレイルはというと、あの後何人もの女性に同時に手を出していたために結果的に全員の女性を失うこととなってしまったそうだ。また、何人もの女性と交際していたという噂が流れたことで女性たちから相手にされなくなったそうで、今では女性は誰も相手してくれなくなっているそう。そして、ブレイル自身そのことを知っていて、落ち込みやすい精神状態になってしまっているそう。落ち込んでいる時には三日ほどほとんど何も食べられないような時もあり、頬がこけ、体力も著しく落ちてしまっているとのことだ。
今や彼の人生に輝きはない。
◆終わり◆




