昔から知り合いだった人と婚約したのですが、彼の行いがあまりに酷いので婚約は破棄とすることにしました。
私には婚約者がいる。
名はルイゼーン。
昔から知り合いだった私たちは、いつからかそういう感じになり、やがて婚約した。
私は彼のことをきちんとした人と思っていた。
育ってくる間、彼は真面目だったから。
だからこそ彼を人生のパートナーに選ぶことも嫌とは思わなかったのだ。
でも、婚約後、ルイゼーンは急激にだらしなくなった。
久々に会った学園時代の異性の知人リリと二人きりで会うことを繰り返し始め、さらには二人でデートのように出掛け、美味しいものを食べたりお泊りしたり――行動はどんどん派手になっていく。
私は何度か「そういうことはやめてほしい」と訴えた。
でも無駄だった。
彼が逆切れして話を終わらせるばかりで。
いつもなんだかんだで途中で話が終わってしまう。
だが。
「ルイゼーン、悪いけれどもう耐えられないわ」
我慢の限界というものもあった。
人間だからまぁあるものだろう。
私のそれは――ルイゼーンがリリと二人きりで高級宿泊所に泊まっていたことを知った瞬間だった。
「もうすぐ結婚する身で婚約者を放置して他の人と会うなんて、しかも異性と。これはもう話にならない。さすがにもう無理よ」
小さなことなら見逃せた。
少し嫌みを言うくらいで我慢できた。
でも、もう無理。
それに、こんな勝手なことをする人と生きてゆくなんて、なおさら無理だ。
「はぁ!? 誰と会うかなんて自由だろ!?」
「自由、にも、限度があるわ。これまでだってずっとリリさんとばかり会って仲良くしていたじゃないの」
悪いが、今はもう、ルイゼーンを気持ち悪いとさえ思えてしまう。
「あーあれか、やきもちか」
「違うわ! これはそういう話じゃない」
「あ? 何だようるせえなぁ」
「婚約は破棄、いいわね?」
「あーあー好きにしろよ! ちっせえ!」
こうして私はルイゼーンとの婚約を破棄した。
その後私は彼の行いを世に出した。
一人で抱えていたら壊れてしまいそうだったから。
彼を護ることは私にはもうできない。庇うことももうできない。だから私はすべてを明かしたのだ。誰にも、その話を隠さなかった。
それによって、ルイゼーンは社会的に終わった。
彼はその後話を聞いて怒った人たちの中の過激な人に襲撃され、二度と癒えぬ傷を負ったそうだ。
命は何とか助かって。
でも未来に希望はなく。
襲撃の恐怖によって壊れた彼は、別人のように、抜け殻のようになってしまったようだ。
彼は今、自分の生活さえできないそうで。
毎日ベッドの上でぼんやりしているだけらしい。
彼にはもう人間らしい暮らしなど戻らない。
でもそれも彼の選択。
彼が躊躇なく私を傷つけた、その結果。
まさに、自業自得。
◆
あれから数年、私は幸福の海の中で暮らしている。
私はセミのような顔の男性と結婚した。
彼はその顔立ちゆえあまり女性と関わったことがなかったようだ。異性の誰かと仲良くした経験もないようだ。でも、とても良い人。だから私は彼を誰よりも愛している。そして、彼も、私を愛してくれている。とても良い関係性だ。
それに、彼の魅力は他にもある。
料理がとても上手なのだ。
そこもまた、彼の良いところである。
◆終わり◆




