厄介な婚約者は強欲な妹に押し付け、私は穏やかな生活を手に入れるのです。
私には妹がいる。
強欲な彼女はこれまでずっと私からいろんなものを奪ってきた。
自分が欲しいと思ったなら絶対に手に入れる、それが彼女の主義――その被害に一番遭ってきたのは、きっと私だろう。
だが今回は。
「お姉様! ちょっとよろしくて?」
「どうしたの? ミレニー」
「お姉様の婚約者、あたくしに譲ってくれませんこと?」
妹ミレニーの性質を活かして困った婚約者を彼女に引き取ってもらおうと思っている。
我が婚約者リルカルト。
彼は容姿は整っているが性格人格がなかなか厳しい。
しかも母親も厄介な人物だ。
「リルカルト様! 美男子ですわよね! 人々が振り返るような美男子、お姉様よりあたくしにこそ相応しいと思いますの!」
「また奪うつもり……?」
「奪うのではないですわ! 相応しい女が彼の横に立つ、それは生物として当然のことでしてよ」
その後ミレニーはまんまと私の策にはまりリルカルトを奪い取った。
リルカルトと私の婚約は破棄となり、その数日後、リルカルトはミレニーと婚約した。
性格に難がある。
そういう意味ではお似合いだ。
◆
数ヶ月後。
私はめでたく一人の気の合う男性と結ばれることができた。
一方で、ミレニーはリルカルトと結婚するもやたらと厳しい規則を決められ行動をかなり縛られてしまい、結婚から半年も経たず心を病んだ。また、リルカルトの母親からも虐めを受けたようだ。だが、心を病んでもなおリルカルトらは優しくはならず、規則を絶対守るということを強制してきて。さらには、規則を守れないと暴力にまで至るようになって。それによって完全に壊れたミレニーは、ある日の晩、自ら命を絶ったそうだ。
ミレニーはもうこの世にはいない。
なんでもかんでも奪ってくる妹がいない世界でなら私は安心して穏やかに生きてゆくことができる。
ちなみに。
私は最近はめだかの世話に凝っている。
家事は夫が雇っている人が行うため、家にいても私は特にすることはない。そこで趣味として始めたのがめだかの世話だった。近所の人がめだかの世話の魅力を教えてくれて、それで、私もその世界に足を踏み入れるようになっていったのだ。
私はこれからもめだかを育てていく。
◆終わり◆




