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たとえ婚約破棄されても。~本当は最期まで貴方といたかった~
「君との婚約は破棄する」
戦場へ行く、前夜。
彼は私にそう告げました。
共にいられると思っていました。共に生きてゆけると信じていました。けれども希望は絶たれて。私は彼には触れられない人になってしまったのです。
泣きました。
彼が戦いの地へ行くことも恨みました。
戦いなんてなければ良かった。
そうすれば、もしかしたらもっと一緒にいられたかもしれなかったのに。
心からそう思いましたし、涙が止まりませんでした。
◆
あれから五十年。
私は今、病によって衰弱し、死に近づいています。
もう年齢も年齢。近くこの世を発つこととなるでしょう。自分だからこそ分かる、確信があるのです。もう長くはない、と、悲しいことですが分かってしまいます。
結局彼には一度も会えませんでした。
もしあの戦いがなければ……今も彼といられたのだろうか。
そう思う時、いつも胸が締め付けられます。
本当は彼といたかった。
最期まで一緒に。
けれども希望はあります。
私が死ねば、彼に会えるかもしれません。
その時は近い。
なので少し楽しみになってきました。
◆終わり◆