良いのですか? その道、破滅の道ですよ? ~そして私は王子の妻となる~
「俺はもうお前とは生きん! 俺が愛しているのはただ一人! ルリシアだけだ!」
婚約者ルインがふんぞり返って言う。
彼と隣には一人の女性。
彼女がルリシア。
ちなみに彼女は私の妹、二人いる妹のうちの下のほうの妹だ。
「よって、婚約は破棄とする!!」
思えば、ルリシアにはいろんなものを奪われてきた。
彼女がいなければ私はもっと多くのものを手に入れられたことだろう。
少なくとも、ずっと色々理不尽に奪われずに済んだはずだ。
「お姉様の顔、愉快~。くっそおもしろ~い。馬鹿みた~い」
「行くぞルリシア」
「もう行くのぉ?」
「ああ。あんな女の顔、見つめていたら吐き気に襲われそうだ」
「じゃあねぇ~、お姉様っ」
ルリシアはまた私のものを奪った。
そういう人なのだと分かってはいる、けれど、それでも……いつだって奪われるのは悲しいし辛いのだ。
◆
あれから五十年、私は王の母として生きている。
子はもちろん多くの孫に囲まれて。
賑やかな幸福のただなかで人生を楽しんでいる。
ちょっとしたきっかけから王子と結婚することとなった私は、多くの子を産んだ。
その数八。
産み過ぎかもしれない、と思ったこともあったけれど、義母からは「王家は貴女がいれば安泰」と褒めてもらえたので嬉しかった。
その子どもたちも今では親となっている。
そして多くの孫が誕生して。
そのおかげで今私の周りには多くの人がいるのである。
ちなみに、長男は王になっている。
そうそう、そういえば、ルインとルリシアは今はもう生きていない。
私を切り捨てて一緒になった直後、ルインが目を離した隙にルリシアが賊に捕まり殺められるという事件があったそうで、その一件以降ルインは心を病んでしまったらしい。
後にルインも自ら命を絶ったそうだ。
死の直前、彼は手紙を書いていたそう。
そこには、ルリシアやその両親への謝罪と己の無力さが大量に綴られていたそうだ。
◆終わり◆




