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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


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かつて私を一方的に嫌い切り捨てた彼は、後に、二人の女性と関わっていたことで破滅してしまったようです。

 私にはルトーインという婚約者がいる。

 しかし私は彼に嫌われていて。

 嫌みを並べられたり、よそで嘘を言いふらされたり、と、日々傷つくようなことをされてきた。


 彼はいつも言う。

 お前みたいな女は誰にも愛されないんだ、と。

 まるで自分に言い聞かせているかのように。


 そんな中で迎えた、ある日。


「急で悪いな」

「いえ」


 今朝急に呼び出されたのだけれど、今日は朝から大雨だったので、ここまで来るのも大変だった。風雨の中だと、濡れるし風で色々激しく揺れるし、で。私の家と彼の家はそこまで離れてはいないのだが、それでも、風雨の中移動するとなると苦労した。なぜ今日なのか、と思ってしまったほどであった。


「お前との婚約だが、破棄とさせてもらうことにした」


 彼はそう述べた。


 苦労してここまで来てこれ?

 そう思うともやもやした。

 風雨の中ここまで来た私の努力は一体……と思わずにはいられない。


「ルトーインさん……本気ですか?」

「もちろん。俺を何だと思っているんだ、嘘つきとでも思っているのか」


 いや、実際嘘つきだろう。

 いつもありもしないことを言いふらしているのだから。


 今回の件とはまた別だが。


「いえ、急だったので驚いただけです」

「馬鹿だな。嫌われていると気づいていなかったのか」

「それは気づいていましたけど……」

「あっそ、くっだらね。ま、いいや。そういうことだから、婚約は破棄な。これで別れだ、さらばダサ女」


 雨降りのこの日、私とルトーインの関係は終わりを迎えた。


 婚約を破棄されたことは残念なこととも言えるかもしれない。が、彼に色々されなくて良いという意味では、この結果は良い結果かもしれない。離れてしまえばもう嫌がらせはされないだろうし。きっと今よりは良い明日が待っているはず。



 ◆



 その後私はすぐに結婚相手を手にすることはしなかった。

 しばらくは自由でありたかったのだ。

 だから私は一人でいようと思い、実家に住んではいるものの、本屋に通っていろんなことを勉強した。


 そんな時、私は、行きつけの本屋にて一人の男性と出会う。


 彼は六つ年上。

 彼もまたその本屋の常連客で。


 初めて喋ったのは、彼が大量の本を落としてそれを拾うことを手伝った日だ。それ以来私と彼は会うと挨拶をするようになって。そうしているうちに段々距離が縮まって、いつしか本の話をするようになっていった。好きな本の話とか、おすすめの話とか。そんな風に交流しているうちに親友のようになっていった。


 で、そんなある日、私は彼から言われた。


「結婚しませんか?」


 かなり驚いたけれど。

 数日考えて、はい、と答えることにした。



 ◆



 あれから数年、私は今も、本屋で知り合った男性と夫婦として生きている。


 本を読むという共通の趣味があるから、彼との会話には飽きが来ない。話題は無限にあり、喋っているとあっという間に時が過ぎていってしまう。それに、彼は本に関して凄く詳しいので、彼と喋っていると良い刺激があって。楽しい、そう感じられるのだ。


 そういえば。

 元婚約者のルトーインだが、彼はもう生きていないそうだ。


 というのも、二股をしていることがばれたことで恋人の女性に激怒され、殺められたのだそうだ。


 また、その亡骸は、葬儀中に恋人でなかった方の女性に襲われ燃やされたそうだ。


 女性二人は既に逮捕されているようだ。

 けれどもそれで彼が返ってくるわけではない。

 死者は戻らない。


 とはいえ、二股していた彼にも非はあるので、正直少し自業自得だと思ってしまう部分はある。


 どんな理由があっても人を殺めてはならない。

 それは事実だけれど。



◆終わり◆

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