かつて威勢よく私を切り捨てた彼は、強制労働刑に処されてしまったようです。~浮かれて女性に乗せられたのが悪いのですよ~
「貴様との婚約は、本日をもって破棄とする!!」
その日、その時、私は終わりを告げられた。
学園時代に知り合い、熱心にアプローチされ、その後に婚約することが決まった婚約者ロードレス。彼のことは嫌いではなかった、いや、共に生きてゆくのに良い相手だと思っていた。彼と生きてゆけるならきっと楽しい日々となるだろう、そう思っていたのだ。
だが上手くはいかなかった。
婚約してから数週間が経った頃から彼は急激にそっけなくなった。
熱は冷めてしまったようで。
何かおかしいと思っていたら――彼が私とは別に仲の良い女性を作っていることが判明したのだ。
で、私は、その件について彼から話を聞こうとした。
けれどもそれが彼を怒らせてしまって。
彼は私を急激に嫌いになったようで……婚約破棄とまで言われてしまった。
――そして今に至っている。
「そんな、どうして」
「不愉快なんだ。交友関係に口出ししてきて。女のくせに生意気なんだよ、ったく、あり得ないやつだ」
私は彼のことを嫌いではなかった。でも、だからこそ、他の女性と過剰なかかわりは持ってほしくなかった。多少なら構わないけれど、毎日のように二人であったり夜中まで一緒にいたりはしないでほしかった。けれどもきっとその気持ちは伝わらないのだろう。
「まぁいい、そういうことだ、とっととここから去ってくれ」
「……はい」
「もう二度と現れるなよ」
「……分かりました」
どうしてそんなに心ないの? なんて聞けるわけもない。
◆
ロードレスに婚約破棄された私は一旦実家へ戻った。
しばらくはなかなか精神状態が戻らず。
もやもやして、悔しさや悲しさも強く、明るく振る舞うことは難しかった。
けれども次第に精神状態も回復してくる。
時が癒やしてくれる傷もある。
いつかそう聞いたけれど。
嘘みたいな話だけれど、あながち間違いでもないようだ。
そうして元気になってきた頃、久々に会った同性の幼馴染みの紹介で一人の青年と知り合うこととなった。
私も彼も、お互い、良きパートナーを求めていて。
何度か会って喋っているうちに段々互いに惹かれてゆき、結婚した。
そうして、あの婚約破棄から数年が経過した今も、彼と夫婦として生活している。
一方ロードレスはというと、あの後愛する女性と婚約したそうだが、婚約者となった女性にそそのかされて法的に黒寄りのグレーとなっている内容の商売を始めたそうだ。
はじめは調子良く儲かったようで喜んでいたらしい。
だがある時知人に密告され。
国の機関に細やかに調査されたことで彼は罪人となってしまったそうだ。
それによってロードレスは強制労働刑に処されてしまい、もう数年、親にすら会えず雨の日も嵐の日も無関係で労働させられ続けているらしい。
ちなみに、その状態は、少なくともあと十二年は続くそうだ。
◆終わり◆




