エルフと人間の架け橋になろうとした彼女でしたが……人間との婚約は破棄となってしまいました。
エルフの女性リリアには婚約者がいた。
その人の名はプトレス。
彼はリリアより三つ年上で、また、種族も異なりエルフではなく人間である。
リリアとプトレスの婚約、それは、二つの種族の関係を保つためのものであった。
とはいえ愛し合っていなかったわけではなく、リリアは彼のことを想っていたし、プトレスもまたリリアのことを可愛らしい人と言い気に入っていた。
だがそれも永遠ではなく。
プトレスは次第に人間の女性を求めるようになり、婚約者がいる身でありながら他の女性と関わりを深めるようになっていった――そんな彼の一番親しい女性となったのが金髪碧眼の女性ウルレリネであった。
ウルレリネはプトレスの昔からの友人であったが、元から想いを寄せていたこともあり、友人のように振る舞いつつもプトレスに近づき次第に関係を深いものへと変貌させていったのである。
ちなみに、ウルレリネにも実は婚約者がいたのだが、彼女はその人のことは嫌いだった。
なので彼女は婚約者のことはいないもののように扱い、日頃からプトレスにひっつきまわり、まるで自分がプトレスの一番の女性であるかのように振る舞っていた。
特に、リリアがいない人間の国では顕著で、「プトレスに一番親しいのは私」というような振る舞い方を当たり前のようにしていたのだ。
周囲は皆そのことを知っていた。
皆そういうものと理解していた。
中にはリリアの存在を知らなかった者もいただろう。
そして、やがて――。
「リリア、君との婚約は破棄する」
いつの間にやらその気になってしまっていたプトレスはリリアとの関係を切ることを選ぶ。
「そんな……」
「やはり妻は人間が良い、エルフも悪くはないけれど……でも、やはり、どうしても人間がいいんだ」
「そうですか……」
「では。さようならリリア」
プトレスはウルレリネを選んだ。
切り捨てられたリリアは泣きながらエルフの村に帰った。その後彼女の身に起きたことを知ったエルフたちは激怒。エルフらは人間に対して悪い印象を抱くこととなる。
「こんな可愛い子になんてこと……」
「信じられないわよね」
「酷すぎる! リリアちゃんに! 心ないことをして!」
「人間ってわりぃやつなんだなぁ」
「最低たす! ぶちのめしてやりたいのたす!」
そしてついに動くエルフたち。
彼ら彼女らはプトレスら人間の国へ殴り込み――そして人々を蹂躙した。
ただし、当事者であるプトレスとウルレリネはすぐには殺されず、エルフらに拘束される。
その後二人が別々の部屋で拷問を受け、長い地獄のような日々を経て処刑された。
以降、リリアはエルフたちの村にて穏やかに暮らした。
友人に囲まれ。
温かな人たちに護られ。
愛する人と出会い。
幸せに生きた。
◆終わり◆




