婚約者に監禁されていた私はこっそり脱出したところ王子に拾われました。おかげで今は幸せに生きることができています。
私には五つ年上の婚約者がいる。
名はオードレッド。
彼は非常にプライドが高く、また、私が私に忠実でなくてはならないと考えている。
で、監禁されている。
表向きは仲が良いので既に同居を開始しているということになっているようだが、これは完全に同意なき閉じ込め。彼が私を閉じ込めているだけ。一方通行の同居だ。
「脱出しようとするなよ。そんなことをしたら……どうなるか分かってるな? 痛い目に遭うぞ、社会的にも、身体的にも、精神的にも、な」
彼はいつもそう言って脅してくる。
けれどもそれに屈する気はなく。
隙あらば逃げ出してやろうと思っていて。
ただ、なかなか良いタイミングがなく、もう一ヶ月が経ってしまった。
そんなある日。
彼が外出することになった。
「そういうことだから、きちんとこの部屋にいるように」
「……はい」
「俺がいないからって脱出しようとするなよ。そんなことをしたら……どうなるか分かってるな? 痛い目に遭うぞ、社会的にも、身体的にも、精神的にも、な。いつも言っているだろう? 分かっているな?」
「……はい、分かりました」
これは嘘だ。
隙あらば私はここから消える。
だって。
こんなところでずっと生きていくなんて嫌なんだもの。
危ないことだってする。
自由のためなら。
ここから出て己のため生きるためなら。
◆
そして、その日、私は部屋を抜け出して裏口から脱出した。
鍵を壊すのは簡単だった。
握力で破壊できる。
そうして私はオードレッドの家から出た。
そんな時、私は偶然、一人の青年と出会う。
「何だかぼろぼろですね……大丈夫ですか?」
出会いは、彼の従者が乗っていた馬に私がうっかりぶつかりそうになってしまったこと。
「実は……」
「なんと。そのようなことが。それは問題ですね。あぁそうだ、では、一時的にうちで保護します。王城にいればさすがにその男も来ないでしょう」
青年は王子だった。
で、私の事情を知ると、城で保護すると言ってくれた。
「親御さんにはこちらから連絡しておきますね。ではどうぞ、こちらへ」
「すみません……」
王子と一緒に馬に乗ることになるとは。
こんなことは一生ないと思っていた。
いや、そもそも、そんな可能性を考えてみたことなんて一度もなかった。
でもこれもきっと何かの縁だろう。
今は彼に頼ろう。
◆
こうして保護された私は城にて生活を始める。
保護後しばらくして両親とも合流でき。
今は家族三人で城に住むことができている。
王族になったわけではないから贅沢ができるわけではない。ただ、ここにいれば、彼からは逃れられる。少なくとも、オードレッドにいきなり襲われることはない。その安心感だけでもかなり快適に過ごせる。ありがたいことだ。
オードレッドとの婚約は王子の権力によって強制的に破棄された。
それから数週間、オードレッドは私がそこにいることを聞きつけたのか城へやって来たのだが、もちろん警備隊によって拘束された。で、刃物を持ち城内で暴れようとした罪で速やかに処刑された。
彼はこの世から去った……。
もう彼に怒られ復讐されることはない……。
また以前のように監禁されることも……。
処刑完了の報告を受けた日は、これまでのどんな日よりも嬉しくて、つい室内で踊ってしまった。
◆
その後私がどうなったかというと?
王子と結婚した。
驚くだろうか? いや、そうだろう、それが普通だろう。だが事実なのだ。嘘みたい? 妄想? 私自身、自分でもそう思う時もある。が、彼と結ばれたことは事実である。
私は今は王子の妻となっている。
◆終わり◆




