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婚約破棄されて、見上げた空。
「君はもう必要ない、さよなら」
それが、彼が最後に私へ向けた言葉だった。
私たちは結ばれるはずだった。
夫婦となり、生涯を共にするはずだったのだ。
……先ほどまでは。
けれども彼は私と生きることをよしとはせず。私と離れて生きてゆくという道を選び、私に対して別れを告げた。
はっきり言ってもらえただけ良かったのかもしれない。
まだ彼は優しかったのかもしれない。
迷宮に入り込んでしまう前に婚約破棄を告げたのは、ある意味優しさだったのかもしれない。
でも。
すべて終わってしまった、その悲しさは消えない。
「必要ない、かぁ……」
溜め息をついてから見上げた空は、皮肉なくらい澄んで美しかった。
◆終わり◆