動物が好きだったのですが、それを理由に婚約破棄されてしまいました。けれども私は進みます。いつまでも立ち止まってはいられません。
「あんたみたいな動物ばっかり触ってるやつ! きたねーよ! 我慢してきたがもう無理だ、こんなくそみたいな婚約なんか……破棄してやる!」
動物好きだった。
幼い頃から。
人とはまた違った生き物と触れ合うのが楽しかった。
でも、そのせいで、婚約者リツールから婚約破棄を告げられてしまった。
終わった――。
心が崩れてゆく。
何もかもが失われてゆく。
痛く。
辛く。
けれども動物好きは事実なのでどうしようもなく。
「……はい」
私はただ彼の前から去るしかなかった。
◆
あれから十数年が経った。
私は今動物園の園長をしている。
毎日とても忙しい。
でも動物を近くで見ていられる日々は幸福そのものだ。
展示される動物への負担が少しでも小さいように――それがこの園のコンセプトだ。
私がゆくゆく結婚するのかはまだ分からない。でも今はこの仕事を続けていたいと思っている、それは確かだ。だから先のことはそこまで考えず日々動き続けている。やりたいことをできている、そのありがたさを忘れずに。私はただひらすらに前を向いて進む。
ちなみにリツールはというと、今はもうこの世にいないらしい。
失恋の悲しさで酒を大量に飲み急死したのだそうだ。
◆終わり◆




