私の母は私にばかり当たり散らしてきます。~もう終わりにしましょう、さようなら~
私の母は理不尽だ。
実の娘である私にことあるごとに当たり散らしてくる。
彼女にとって私は何をしても怒らない都合の良い生き物なのだ。
「この皿、返せって言ったでしょ!」
「前そこに置いておいてって――」
「うるさい! 余計なこと言うな! あれこれ言うな!」
母は日々思いついたかのように私を叱る。だがその内容には真っ当なものはほとんどない。なんなら数日前と違うこと真逆のことを言ってきていたリすることも少なくはない。で、先日言っていたことと違うために戸惑っていたり何か少し言葉を返したりすると、さらに怒り出す。こちらが真っ当なことを言えば言うほど母は不機嫌になるのだ。
不利になると無理矢理話を終わらせるところなんかは、愚かの極み。
そんなある日。
私は母から告げられる。
「リエルとの婚約、破棄しといたから」
「え――」
信じられない。
なんて勝手な。
怒りが湧き上がってくる。
「あの子、あんたとじゃ合わないでしょ? だから婚約は破棄しておいてあげたのよ」
「待って! そんな勝手な!」
「うるさい!! 黙れ!! 娘がくちごたえするな!!」
こうして私は婚約者リエルを失うこととなってしまった。
◆
一週間後、私は、買い物中に見かけてしまった。
母がリエルに迫っているところを。
「やめてください!」
「んもぉ、いいじゃない」
「娘さんとはもう縁が切れたはずです!」
「あたしは娘じゃないわ、縁だって別よぉ。それより、これからどぉ? あそこの宿泊所なら一泊しないコースもあるのよ?」
若い男性にすり寄る母。
見ているだけでもぞっとする。
恐ろしい、としか言い様がない。
「やめろ!!」
リエルは母を突き飛ばして走り去った。
一体何をしていたの?
まさか彼を奪おうと?
考えれば考えるほど気持ちが悪くて――私は家出することにした。
◆
あれから二年、私は一人暮らしにも慣れ、恋人もできた。今は母に当たり散らされることもなく心穏やかに生活できている。もちろん時には大変だと思うことだってあるけれど、それ以上に嬉しいことや楽しいこともあるので前向きに生きていられる。
この道を選んで良かった。
そう思えている。
ちなみに母はというと、あの後リエルに対してストーカー行為を続けたために地域の警備隊に突き出されたそうで――それによって、評判は地に堕ち、夫からは離婚を言いわたされることとなったそうだ。
今は独り身となり牢の中で寂しく生活しているらしい。
ま、自業自得だろう。
私を傷つけてきたのだ。
今度は自分が傷つけばいい。
そして、傷つけられた時に人間が感じる痛みを学べば良いのだ。
◆終わり◆




