特別な力を持って生まれた私は眼鏡を外せずそのために色々残念な目に遭ってきましたが、最終的には幸せを手にできました。
私には生まれつき特別な力があった。
強大な力。
人を消し飛ばすどころか街や国をも消し飛ばせるような魔力である。
ただ、それをむやみに使ってしまっては危険なので、私は幼い頃から封魔の眼鏡をつけていた。
「やーいメガネクソー」
「地味子ちゃぁ~ん、かぁ~わい~いぃ」
「もてねーだろめがね」
その眼鏡のせいで、昔から、知り合いに色々言われてきた。
眼鏡をかけている女性は少ない。
若い人となるとさらに。
それゆえからかいの対象となってしまいがちなのだ。
けれどもそれには耐えられた。大きな力を抱いているから仕方ない、そう思えたから。私が我慢すればいい、そう思って生きてきた。この眼鏡をつけていることが世界のためなら私はそれでもいい、そう思っていたのだ。
だが。
「わりーけどよ、婚約、破棄するわ」
「どうして……」
「眼鏡がださくてさ、やーっぱ無理だわ」
婚約者エリオからそう言われた時はショックだった。
眼鏡だけのために婚約破棄されるの?
眼鏡はそんなに悪なの?
眼鏡をしているだけで私の価値がそんなにも下がるの?
「おれ、もっと美人が良いしさ」
「そうですか……分かりました」
「そういうとこも可愛くねーよな、せめて泣いて謝れよ」
「ではこれで失礼します」
「おい! 待てよ!」
エリオは容赦なく腕を掴んでくる。
「なーに勝手に出ていこうとしてんだよ! 女なら謝れよ!」
「しかし……」
「謝って当然だろ! 女はなぁ、男に言われたらどんなことで受け入れて謝らなくちゃなんねーんだよ! それが当たり前なんだ! 取り敢えずその眼鏡外せや!」
感情的になっているエリオの片手が眼鏡を払った。
眼鏡が宙を飛んでゆく。
「あ――」
その時には手遅れだった。
瞳に浮かぶ紋章。
そして自動で発動される術。
それは、近くで目が合ったエリオに向けて放たれる――。
「……ぎゃああああああああ!!」
エリオは急に叫んだ。
耳が痛いほどの大声。
そして彼の肉体は内側から崩壊してゆく。
こんな術もあったとは知らなかった。
「あば、あば、ぶ、ぅ、ええええええええ!!」
そしてエリオは死亡した。
私は急いで眼鏡を拾い着用。
それですべてが停止する。
何とか何も壊さずに済んだ――目の前のエリオ以外。
◆
あれから数年、私は、国王の管理下に置かれた。
私の力は危険だという話になったからだ。
けれども幸い酷い扱いを受けることはなかった。
「ここでゆっくり暮らすといい」
国王には心があった。温かい心、思いやりの心が。だから、危険人物である私に対しても、普通の人へ向けるものと同じような配慮があって。
「あの部屋でなら、その力が暴走することはないだろう」
「ありがとうございます」
おかげで穏やかな暮らしを与えてもらえた。
◆
城の一室に置かれるようになって数年、私は、王子の妻となった。
ある時偶然出会って。
それからは早かった。
運命は私たちを早く強く結びつけたのだ。
眼鏡は今も外せないけれど、レンズ越しでも彼と見つめ合うことはできる。
◆終わり◆




