妹が私の婚約者に嘘を吹き込んだようです。~紅の結婚式、二人は幸せにはなれません~
「あんたって最悪な女やったんやなぁ」
婚約者ルローズがいきなりそんなことを言ってきた。
穏やかな日射しが降り注ぐ日のことだ。
「妹さんから聞いたで、いっつも妹さん虐めてたんやろ? 姉やからって、妹さんの行動に色々規制をかけたりしてたんやろ?」
妹のことだ、きっと嘘を吹き込んだのだろう。
彼女はそういうことを平然と行い人間だ。
昔からそうだった、私はいつもその被害を受けていた。
「待って、意味が分からないわ」
ルローズには勘違いされたくない。
その一心で言葉を発する。
「せやろなぁ、隠してたんやもんなぁ」
「そうじゃないわ。隠していたとかそんなのじゃない。心当たりがないのよ、妹を虐めていた、なんて」
でも彼は私の言葉を受け止めてくれない。
「そんな人と夫婦になるんは無理やわ。せやから婚約は破棄するなぁ」
「嘘よ! 虐めたなんて!」
「そうかぁ? なら妹さんが嘘をついてるて言うん?」
「そうよ、きっとそう。だって昔からそういうことが――」
言いかけるが。
「まぁええわ、悪事を必死になって隠す潔くない人とは無理やもん。じゃあこれでな。まぁ、一人になってからでええから、ゆっくり反省し? ほななぁ」
最後まで聞いてもらえなかった。
◆
数ヶ月後、妹はルローズと婚約した。
妹は私から彼を奪い取ったのだ。
嘘を利用して。
私を悪者に仕立て上げて。
薄々思ってはいたけれど、まさか本当にそんなことになるとは思っていなくて、だから少々驚いた。
何もかもが嫌になった私は家を出た。
どこかで一人飢え死にする方がまし、そう思ったのだ。
◆
結論から言うと、私は魔法使いに拾われた。
人里離れたところに住む彼が、何も持たず家出して倒れていた私を助け、それから二人での暮らしが始まった。
私は出会った日に彼にすべてを明かしている。
そのうえで同居することになった。
だから多分、彼は、私の事情を理解したうえで接してくれているのだと思う。
今はとても幸せだ。
これは街へ買い出しに行った時通行人から聞いた話だが。
ルローズと妹は結婚式の最中に賊に襲撃されて落命したそうだ。
二人の結婚式は、血の祭りとなったようである。
白色のドレスは紅に染まり。
新郎新婦は落命し。
参加者も多くが負傷させられ。
まさに、悪夢だ。
あのまま家出せずあそこにいて、妹らの結婚式に参加していたら――もしかしたら私も賊の襲撃による被害を受けていたかもしれない。
◆終わり◆




