幸せな未来を誓い婚約した私たちでしたが……その関係は結婚までもちませんでした。
「きっと一緒に生きて幸せになろうね」
「ええ、よろしく」
学園時代に知り合ったオアヒムと婚約することになった時、私は嬉しかった。
お互い幸せな未来を誓えたこと。
共に生きてゆこうと迷いなく言えたこと。
それが誇りだった。
きっと幸せになれるはず――そう信じていた、その時はまだ。
◆
婚約してから数ヶ月が経った頃、オアヒムが他の女性と深い関わりを持っていることが判明。そのことについて話をしようと思って話し出してみたところ、彼は激怒した。
「彼女とはそんなんじゃない! なのに俺を疑っているのか!? あり得ない! お前がそんなにも信じてくれない女だなんて思わなかった!」
「落ち着いて、そういう話じゃ――」
「もういい! お前との婚約なんぞ破棄する!」
「ええっ」
「お前には幻滅したよ。優しい人だと思っていたのに! じゃあそういうことで。二度と顔を見せるな!」
こうして私は一方的に婚約破棄されてしまった。
私が悪いの?
私のせいなの?
少しもやもやしてしまう。
◆
二週間後、オアヒムの死を知った。
彼はその日もあの女性と一緒にお出掛けして夜まで楽しんでいたようだ。
しかしそんな夜に謎の死を遂げたのだそう。
彼の身体には殴られたような跡はあったようだが、何が起きたのかははっきりしなかったらしい。
だが、死から少しして、女性に殺されていたことが発覚したらしい。
というのも、その女性とはまた別の女と仲良くなっていたそうで、そのことが女性にばれてしまったために姿見で殴られ続け、その果てに亡くなってしまったということのようである。
他の女がいたために姿見で死ぬまで殴られる、か。
なかなか恐ろしい状況だ。
想像するだけでも気分が悪くなりそうな案件である。
ただ、引き金を引いたのは彼の行いなので、自業自得という要素もないことはない――いや、むしろ、その要素が強いと言えるかもしれない。
殺さなくても。
そうは思うが。
でも女性にとってはそのくらいのことだったのだろう。
◆
あの婚約破棄から数年、私は愛する人と結ばれることができた。
オアヒムに切り捨てられてからはしばらく憂鬱な時が続いていたけれど――その果てに出会い心惹かれたその人こそが今の夫である。
彼は誠実な人だ。
他の女性のところへふらふら行ったりはしない。
悲しみの海を越え、憂鬱の谷も越え。
今度こそ、きっと幸せになってみせる。
今の私にはその自信がある。
だから前を向いて歩む。
信じられる、信じている、彼と共に。
◆終わり◆




