心ない言葉を並べられたうえ婚約破棄されてしまいました……が、その後奇跡のような出会いがあり、幸せになれました。にっこりです。
「お前との婚約は破棄する」
婚約者であったリジュからそう告げられたのは、ある晴れた日のことだった。
リジュに呼び出された私は彼の家へと向かった。
するとそこで関係の終わりを告げられてしまったのだ。
まさかの展開に脳が停止してしまって。
何をどうすれば良いのか分からず――ただただ固まってしまうことしかできなかった。
「お前ってさ、ほんと、忠誠心ないよな。俺が誘っても全然相手してくれないし。ほんと萎えるわ。あれ以来萎えまくりでさ、お前の顔見るたびにげんなりするんだわ。あーもうまじで消えてほしいっていうか? お前の顔とか見てたら俺不幸になるわ」
リジュは心ない言葉を並べる。
「世にはもっと美人でもすぐ従ってくれてむしろ喜んでくれるくらいの女性もいるのにさぁ、お前くらいのレベルのやつがお高くとまり過ぎとかがち萎えなんだよ。呆れるわ。お前、自分がどんだけ素晴らしいと思ってんだよ、女神とでも思ってんのか? 馬鹿か? 脳みそなしか?」
彼は今、とても楽しそうだ。
彼は人を傷つけることが好きなのだろうか?
「それに、お前、勉学もまぁまぁだろ? 最高レベルじゃないよな。上から二番目のレベルの学校卒だろ? まぁごみだよなー。そんなレベルで、顔もまぁまぁで、忠誠心もないとか、ほんとあり得ないわ。くそだろ、糞だろ」
こうして私はリジュに捨てられた。
驚くくらいいきなりのことで。
数日はずっと泣きそうだった。
◆
一週間後、久々に街へ出掛けたところ、財布をなくして困っている青年オブリに出会う。
「大丈夫ですか?」
「困っています……」
「よければ一緒に探しますよ?」
「え……良いのですか」
「はい、もちろんです。場所の心当たりとかあります? もしあれば、そこを重点的に探せますので」
二人で財布を探す。
すると見つかった。
草むらの中に飛び込んでしまっていたようだ。
「ありがとうございました! 本当に! 助かりました! 心より感謝いたします!」
「見つかって良かったです」
その日はそれだけで別れた。
――しかし、後日連絡があった。
王城から。
オブリと名乗っていたあの青年は実は王子だった。
で、彼が礼を言いたいと言っているそうで。
こうして、意外な形ではあるが、私とオブリと名乗る王子との関係は始まった。
◆
あれから数年、私は今、王子の妻となっている。
夫はオブリと名乗っていた王子。
あの後色々あって彼と結婚することとなって、今に至っている。
今は毎日とても楽しい。
優しい夫。
広々とした生活環境。
どちらも素晴らしい。
今は毎日笑顔でいられる。この幸福を捨てたくはない。いつまでも、大切に大切に、抱き締めていたい。何年経っても、何十年経っても、今のこの気持ちを忘れないでいようと強く思う。
ちなみに、かつて私を理不尽に切り捨てたリジュは、もうこの世にはいないらしい。これは自分の親から聞いたことなのだけれど。リジュはあの後一年も経たないうちに頭部が巨大化する謎の病にかかってしまい、お金をかけて治療するもまったく改善せず、最終的には破裂して亡くなってしまったそうだ。
◆終わり◆




