威張っていた妹が婚約破棄されたのであれこれ言ってやります。~悪女でも良いのです~
妹リリーは昔から私を見下していた。
彼女はいつだって自分を可愛いと思っていて自信を持っている。
そして私を下の者として扱う。
「お姉様、ほーんと地味ですわよねぇ。殿方からもてないはずですわね!」
こんなことを言われるのはまだ可愛いもので。
「お姉様が姉で恥をかきますわ、なるべく出てこないでくださる?」
と言われたことだって少なくはなかった。
でも、リリーがそんなことを言っても、誰も注意はしない。親も、周りの大人も、仕方ないことというような顔で流している。私が傷ついていても、その傷には気づいていないふりをするのだ。
そんなリリーがついに婚約した。
相手は良家の子息。
良い相手を手に入れられた彼女はご機嫌だった。
「やはり人気で困ってしまいますわー、うふふ。良い人に見初められてしまいましたわー。彼、見る目がありますわねぇ! ……ま、お姉様じゃどうあがいても無理でしょうね、うふ」
だが、数週間後、リリーは婚約者から婚約破棄を告げられた。
婚約者ができてからもリリーは幼馴染みの男性と仲良くしていた、そのことが問題となったようだ。
婚約破棄された日、彼女は泣いて怒っていた。
顔を涙やら何やらの汁でぐしゃぐしゃにしていた。
可愛いとされる顔もそんなではただ汚いだけだ。
「婚約破棄されるなんて……残念だったわね、リリー」
「お姉様」
私はきっと悪なのだろう。
傷を抉るような真似をして。
けれどもそれでも構わない。
悪女でも、構わない。
「あんなに誇らしげにしていたのに、男と遊んで婚約破棄されるなんて、貴女らしくないんじゃない? ああ、それか、魅力が足りなかったんじゃない? 魅力があれば、きっと、少しくらい見逃してもらえるものでしょう?」「ぐ……」
これまで散々やられてきたことを返すだけ。
「そんなくらいで捨てられるなんて……もしかしたら貴女も私くらいの魅力しかなかったんじゃない? なんて、冗談よ。でも、きっと、そこまで愛されてはいなかったのでしょうね」
「お、お姉様……この悪女……」
「何とでも言えばいいわ。私はただ、貴女がこれまでしてきたことを返すだけのことよ」
「き、きぃぃぃぃぃぃぃ!! くそ姉のくせに!! 死ね! 死ね! 舐めやがって死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!」
リリーは怒りのあまり精神崩壊した。
急に暴れ、割った鏡の破片を掴んで私を殺そうとして――結果、治安維持組織に拘束された。
彼女は牢送りになった。
◆
その後私は実家を出て一人暮らしを始める。
そしてやがて一人の男性に出会い。
結婚し苦痛のない暮らしを手に入れることができた。
◆終わり◆




