剣を使う女は野蛮なのですか? 婚約破棄された私は剣士となりましたが後に結婚もしました。
剣士の父がいる家に生まれた私は幼い頃からよく剣を握っていた。
父はいつも熱心に教えてくれた。そして私が上手く剣を振れた時には大袈裟なくらい褒めてくれていた。だから剣を振るのは好きだった。剣を手にしている時はとにかく楽しかったのだ、成功体験が多かったから。そして、時には父と共に魔物退治に出掛けたりもした。それもまた楽しい時間だった。
しかし、剣を振るのが好きだったことによって、悲劇が起きた――。
「君とはやっていけないよ」
婚約者リレイズンは私が剣を得意としていることを良く思っていないようだった。
最初に喋った時からそのような感じではあって。
だから薄々まずいなとは思っていたのだけれど。
ただ、そこまで深くは考えておらず、他のところで埋めれば良いだろうくらいに考えていた。
けれどもそれが甘かったのだ――。
「剣を振るのが好きな女、なんて、妻にしたら恥をかくよ」
「そうでしょうか……」
他のところで埋めよう、なんて、馬鹿だった。
無理だったのだ。
穴埋めなんて。
どうあがいても私は彼に愛されない。
それが現実だった。
「今でも言われているんだ、友人から、野蛮人とよく付き合うなって」
「酷いですね……」
「ま、そういうことだ。僕は既に君のせいで被害を受けている。……分かったかな」
ここまで来たらさすがに何を言われるか分かる。
「婚約破棄、だ」
そしてその予想は当たっていた。
こうして私は切り捨てられた。
◆
あれから数年、私は、一人の治癒術士の男性と結婚した。
出会いはある森。
剣士として戦っていた私が負傷した時、知り合いでもなかったにもかかわらず彼は手当てをしてくれた。
彼の手当てはとても温かくて。
気づけば彼に惚れていた。
けれども惚れていたのは私だけではなかったようで。
彼もまた、同じ心を持ってくれていた。
通じ合っている――そう気づいた時はとても嬉しかった。
愛している人が自分を愛してくれている、もしその事実に気づいたら、きっと誰だって嬉しく思うはず。
そうして私たちは結ばれたのだ。
共に行く未来を手に入れて。
そして現在にまで至っているのだ。
私はもう前線に出ることはやめた。それが夫の望みだったから。ただ、子どもに剣を教えたり咄嗟にできる防衛行動を指導したりということは行っている。これでも細々と活動はしていて、完全に引退したわけではないのだ。
ちなみにリレイズンはもう生きていない。
彼はあの後裏社会の人に喧嘩を売ってしまったそうで。それによって山小屋に連れていかれて殴る蹴るの暴行を受けてしまい、そのまま一人寂しく死亡することとなってしまったようだ。
彼は最期、情けなく命乞いしていたそうだ。
私は妻であったなら少しは何かしてあげられたかもしれないが――ただ、この世にもしはないので、そのようなことを考えても意味などない。
己が滅ぶ道を選んだのは彼自身だ。
選ばされたわけではない。
強制されたわけではない。
まさに、自業自得、というやつである。
◆終わり◆




