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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


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いきなりの婚約破棄、衝撃でした。けれども私はどんな絶望も越えてゆきます。絶望を越え、愛する人と共に、幸福な道を歩むのです。

「お前ってさぁ、ほーんと、ぱっとしねえよな」


 いきなりそんなことを言ってきたのは婚約者ビレスだった。


 ある晴れの日、彼から呼び出されて、彼の家へ向かった。するとサンドイッチが用意されていて。それを彼と一緒に食べることとなったのだ。具材も色々でなかなか美味しいサンドイッチだった。


 けれども、彼から振られた話題によって、美味しさなど吹き飛んでしまう。


「え……」

「実はさ、伝えたいことがあんだよ」

「何?」

「婚約、破棄な」


 まさかの言葉。

 信じられないような言葉。


 思わず固まってしまう。


 どうしてそんな? 嫌いになったから? でも喧嘩はしていないし揉めていた記憶もないし、時折失礼なことを言われることはあるけれど……。でも婚約破棄は過激過ぎない? 一体どういうことなの?


「なーに固まってんだよ、心当たりはあったろ?」

「……困るわ、そんな急に」

「はい? 何言ってんだ? お前に拒否権なんてねぇよ。俺が言ったことがすべて、俺が決めたことがすべて、だ」

「本気で言っている……のよね」

「ああもちろんだ! じゃ、そういうことなんで、さっらぁばぁ!」


 ふざけた別れの言葉をかけられて、私と彼の縁は切れてしまった。


 説得する時間など与えてはもらえず。

 私はただ捨てられる。

 まるでごみであるかのように。


 サンドイッチの美味しかった味すら、今はこの身に突き刺さる刃のよう。


 私に選択肢はなかった――そして、すべてが黒に染まる。



 ◆



 あの突然の婚約破棄から数年、私はある園芸好き向けパーティーにて一人の男性と出会った。そして、関わっているうちに互いを想うようになり、親しくなっていって。その結果、私たちは結ばれた。


「明後日、例のパーティーだって」

「そう!」

「一緒に行かない?」

「本気?」

「もちろん! だってさ、あのパーティーってさ、思い出の会だよね? 久々に一緒に行ってみようよ」


 今はもう、ビレスのこともあまり思い出さなくなった。


 だが、あの件の直後の頃、彼について聞いた話がある。


 彼は隠れて付き合っていた女性と私との婚約を破棄してまで結婚したそうだが、いざ結ばれると上手くいかず、ある日の夫婦喧嘩の最中に妻に桶で何度も殴られて死亡したらしい。


 何とも悲しい最期だ……。


 でも同情はしない。

 彼は私に隠し事をしていたのだから。

 そんな人に同情など絶対にしない。


 当たり前だろう、裏切り者がどうにかなったとしてもどうでもいい。


「そう、そうね。行ってみましょう」

「もしかして嫌?」

「いいえ」

「本当に? 大丈夫?」

「ええ」

「よっし! じゃ、行こう! 夫婦で行けるなんて、初めてで、とっても楽しみだよ!」


 私は折れない。

 山も、谷も、迷うことなく越えてゆく。


 愛する人と共に――。



◆終わり◆

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