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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


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婚約破棄、そして、私だけのハッピーエンドへ。

 思えば、貴方と出会った日もこんな雨の日だった。


 山道で転倒して困っていた私に手を差し伸べてくれたのが貴方で。どうしようもないという絶望から私を連れ出してくれた貴方に、私は心を奪われた。それからはずっと貴方が愛しくて仕方がなくて。今思うと、その時から既に私の貴方への想いは始まっていたのね。


 そして、それから色々あって、ついに婚約するに至って。


 とても嬉しかった。

 夢をみているみたいで。


 貴方と生きられる――こんな幸せはない、そう思ったわ。


 だから思ったの。

 貴方を護っていこうと。

 貴方のために生きようと。


 ――でも貴方は私を捨てた。


「他に好きな人ができちゃったからさ、ごめんだけど、婚約は破棄するよ」


 青ざめる私の前で貴方はそう言って笑う。

 どこか無邪気に。

 それは貴方の恋を描いているかのようで。


 私の絶望はより大きくなった。


 掴めたと思った。

 幸福に手が届いたと。


 けれどもそれは幻想でしかなかったのだと、貴方に終わりを告げられてようやく気がついた。


 私が手に入れたと思っていたものは、私が抱き締めることができていると思ったものは、すべてが幻。幼い夢でしかなかったのだ。


 そう気づいた時、私の中の鎖が壊れた。


「――そう、ならば、共に滅びへ至りましょう」


 貴方を離しはしない。

 心までは持てずとも。

 地獄の底まで、永遠に、抱き締めたまま引きずり込んであげる。


 私は死に、貴方もまた死んだ。


 雨降りの夜に。


 人々はそれを悲劇と呼ぶ。

 けれども私にとっては違う。


 これは、私にとっては――ハッピーエンドなの。



◆終わり◆

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