ある晩餐会にて婚約破棄されましたが、その後とても心が綺麗な人に出会えました。そして幸せになれたのです。
ある晩餐会。
皆が見ている前で婚約者リーゼンが宣言する。
「貴様は顔面は良いがその他はゴミだ! 特に! 清楚ぶっているところが気に食わん! よって、婚約は破棄とする!」
周囲にいた女性たちは、婚約破棄されていた私を見て、楽しみつつ憐れむかのようにくすくす笑い声を立てていた。
馬鹿にされているのか、気の毒に思われているのか、それすら分からないけれど――今はそこに意識を向けているほどの余裕はない。
それにしても、人前で他者をゴミと呼ぶなんて。
彼はどうかしていると思う。
普通は人前でそんなことは言わないだろう、たとえ思っていたとしても。
こんな風に迎えてしまった婚約破棄の瞬間。
私はどこまでも哀れで。
ただ悲しみと虚しさを抱えてその場からは去り生きてゆくしかなかった。
◆
だが、その晩餐会から数ヶ月が経った頃、私は出会った――この国で最近発見されたばかりの生物ミミシッポアカガレッドガメに似ている一人の穏やかな青年に。
彼と出会ったのは公園の池の近く。
「何しているのですか?」
「すみません、ごま塩をなくしてしまって……」
「え」
「うう……ごま塩……」
「そうでしたか……」
意外な展開からの出会いではあったけれど、私たちはすぐに仲良しになった。
「これですか?」
「あああ!」
「そう、ですか……?」
「ああはい! はい! まさにそれです! ありがとうございます! うわぁ嬉しい! おかげで見つかりました!」
その後私は、そのミミシッポアカガレッドガメに似ているその男性と親友のような関係になってゆき、結婚するに至った。
彼のことは好き。顔立ちは少々独創的だけれど。でもそんなことなんてどうでもいい、彼を見ているとそう強く思う。なんせ彼は心がとても綺麗な人だ。接すればきっと皆気づく、彼が素晴らしい人だということに。
◆
あれから数年が経った。
けれども今も仲良し夫婦のままだ。
刺激はなくても日々は楽しい。
私たちは穏やかな今日を幸せに生きている。
ちなみにリーゼンはというと――今は父親が残して逃げた凄まじい額の借金を返すためあくどい商人のもとで奴隷のように働かされているらしい。
◆終わり◆




